この世界は、真夏でできている。
駅まで向かう途中、相変わらず視界が揺れるほど太陽は東京の街を燃やそうとしている。

日焼け止めを塗りながら、私は「優介迎えに来てくれるなんて思ってなかった」と問いかける。

優介は一瞬黙り込んで、
「思い出せるように、頑張ろうかなと思って」と、

今の優介からしたら意外な言葉を放った。

私は額に流れた汗も気にならないほどその言葉が嬉しくて、思わず優介に飛びつこうとするが、

彼は冷静にやめろ、と私を抑えた。

「じゃあさ、私も協力する!!」

「いや、協力とかは別に…」

優介の言葉を遮り、「いい考えがあるんだ」と言葉を続ける。

優介は呆れたのか諦めたのか、小さくため息を吐いた。

そんなものさえも無視して、私はさらに続けた。

「明日から何の日か分かる??」
「さぁ」
「夏休み!!
引っ越す前に、2人で行った色んな思い出の場所を巡るんだよ!」

「あぁー、それはたしかにいいかもな」

私は思いっきり人差し指を突き出して、
人目も気にせず叫んだ。


「名付けて、思い出せ!メモリーズの旅!!」
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