この世界は、真夏でできている。
ー目が覚めると、そこは見知らぬ場所だった。

自分の名前はなんだったのか。

目の前にいる女は誰なのか。

依然、思い当たる節はない。ー

家に着いてから、さっそく購入した本を読みふけった。

記憶を取り戻したい僕とは真逆なタイトルに惹かれ、

1ページも、あらすじさえも読まずに購入してしまったが、

サスペンスなのか、ミステリーなのか。はたまた恋愛小説なのか、何もわからなかった。

序章も何も無く、いきなり本編が始まる。

主人公は目が覚めると病院で、目の前では知らない女に腕に抱かれた。

僕と、僕と同じだ。

僕の場合、その知らぬ女は姉であった。

姉は僕の様子を悟ると、みるみる顔を青ざめていた。

女の名は橋爪朋香(はしづめともか)

その女は彼に自分は恋人だと言い、結婚も目前にしていた矢先の事件だった。

それから夢中でページを捲り、彼女の家で同棲する所まで行ったところで、

彼女…瑠夏から電話が掛かってきた。
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