この世界は、真夏でできている。
今日から8月に入るが、なぜだか途端に暑さが一層増したように感じた。

視界は赤や青の炎が見えるのではないかと言うほど揺れ、

太陽の陽射しからはジリジリと僕らの肌を焦がす音が聞こえてくるようであった。

蝉は相変わらず時雨を打ち叩いている。


“ちゃんとしたところ”と言うぐらいだから、それはもう綺麗な景色が見れるところとか、

電車を走らせなければ行けないようなところを想像していた。

そんな予想とは裏腹に、彼女が待ち合わせに告げた場所は

以外にもすぐ近所のマンションであった。

このメモリーズの旅以降、1度も僕より先に着いたことの無い彼女は、

今日もやっぱり2分遅れだった。

こういうルーズなところも、僕からしたら好きになるはずのない要因の一つだ。

彼女は手に持つサイズの小さな扇風機を自分に当て髪をなびかせていた。

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