この世界は、真夏でできている。
こうしてみると、彼女は綺麗な髪をしている。

清楚な黒髪ではなく、チャラチャラした茶髪ではあるが、

どこか彼女の存在を引き立たせる素材となっている。

ルーズでおちゃらけてだらしない彼女には勿体ないとすら思う。

「じゃ、行くよー」

「えっ、ここじゃないの?」

ここはただのマンションと言えどもそこそこ大きなマンションだったため、
思わず拍子抜けた声を上げてしまった。

「うん。ここは3年くらい前に出来た新しいマンションだから」

心做しか彼女の表情が少しだけ切ないように見えた。
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