この世界は、真夏でできている。
優介は「好きな人?」と今度は不思議そうな表情を浮かべ、

エアーマイクはいつの間にか崩されていた。

「じゃ、しょうがねぇ」
「そうそう、優介にもいるでしょ、好きな人」と言い、

私はそのままじゃあね、と彼のいる待ち合わせ場所へ駆け足で向かった。

(好きな人ねー…。お前なんだよなぁ)

きっと、この頃の私は、優介がどんなことを考えているのかなんて、

想像もついていなかったと思う。
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