この世界は、真夏でできている。
「都会の方には、こんなおんぼろな店やってるばぁさんなんて珍しいかもしれんな。」

「いえ。懐かしいです。」

ちょっと待ってな、と言い、そのお婆さんは店の隙間へ入って行った。

30秒ほどで戻ってくると、僕らにアイスバーを1つ、差し出した。

彼女は一瞬何かに気づき、お婆さんにお礼を告げた。

その目には、涙を浮かべているようにも見えた。

そしてその場で袋の上から、アイスを縦に半分に割り出したのだった。

「えっ、何してんだよ」

そして開けた袋の中からは、半分に割られ、2本になった棒付きアイスが出てきたのだった。

お婆さんは優しく笑い、「またおいで。」と言ってくださった。
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