この世界は、真夏でできている。
帰りの電車では彼女は爆睡で、僕はこの間買った小説の続きを読むことにした。

それから彼は一緒に過ごす部屋で波乱万丈な日々を送り、
彼女の優しい部分にも触れる。

ー僕は、彼女に惚れてしまった。ー

主人公がヒロインに恋に落ちるところまで話が進んだところで、

降りる駅が近づいていることに気がついた。

起こそうと彼女の顔に目を向ける。

上からだと、思っていたよりまつ毛が長いのが分かる。

これが世間で言う、“見惚れている”ことであるなら、

僕は否定は出来なかっただろう。

現に僕は、彼女を起こすことを躊躇してしまった。

この綺麗な寝顔を崩すことを、寂しく思ってしまっていたのだった。
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