この世界は、真夏でできている。
家に着く頃には時間は22時近くまで回っており、

玄関を開けるとすぐに姉が仁王立ちで待ち構えていた。

「デート?」

「違うよ。」

「るーちゃんでしょ。」

えっ、と声を漏らすと、姉は図星か、と悪巧みなようにニヤついた。

「夕方仕事帰り偶然駅であんたたちを見かけたの。

るーちゃんのこと…覚えてたの?」

「ううん。何も。今訳あってまた関わってるだけ」

ふうん、と姉はそのまま部屋へ戻っていってしまった。

片方靴を脱いだところで、彼女からメッセージが入った。

『明日は、12時に白島駅北改札前ね』

僕の予定はお構い無しか、と感じつつ、どこか浮ついた気持ちでいる自分を見て見ぬふりしたまま、

僕は『わかった』と返事をした。
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