この世界は、真夏でできている。
白島駅はイルミネーションが有名な観光地である為に、

普段の僕らの最寄り駅とは人の多さが格段に違っている。

ましてや昨日訪れた無人駅とは真逆の世界だ。

同じなのは鬱陶しい太陽と、気温と、それから蝉の音くらいだ。

なんなら人の密度が高い分、暑さが倍増して感じる。

相変わらず待ち合わせの時刻より20分近く早くついてしまった僕は、

暑さを凌ぐ為にも駅を出てすぐ側にあるコンビニで時間を潰すことにした。

ひやっ、と冷たい空気が体に当たり、思わず息を吐いてしまう。

入口を入ってすぐに、ずらっと並べられた雑誌の中から、

旅行のパンフレットが目に入った。

何故か引き寄せられるようにページを捲り、中に載せられた綺麗な景色や

大きく強調された名物の食べ物たちの写真を見た。

結局20分まるまるそれを見漁るのに費やしてしまい、急いで雑誌を購入してコンビニを出る。

駅の方へ戻ると途端に、僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。
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