この世界は、真夏でできている。
声は彼女の声とは違い、男の声だった。

「やっぱり!優介だよな!?」

金髪混じりの、見るからにチャラそうな男だ。

(りょう)だよ!小学生の頃、塾同じだったじゃん〜お前が引っ越す前仲良かっただろ!」

申し訳ないが、彼の記憶はひと握りも残っていなかった。

以前から、こんなにチャラチャラした人物と絡んでいたのだろうか。

「久しぶり、元気だった?」
「俺さ、今学校やめちゃってんの!馬鹿だよな〜それでも割と楽しくやってる!」

彼に話を合わせ、なるべく明るく、ほとんどを相槌でやり過ごす。

「また今度飲み行こうぜ〜」

自分の年齢を確認せざるを得ないほど、
彼は流れるように飲みの誘いをしてきた。

「未成年だろ」

「ははっ、変わんねーな〜!」といい、彼はこの場を去った。

視線を外すと、彼女が僕をじっと見ていた。

「…いつからいたの」

「んー、涼くんって人に話しかけられるとこから」
「全部じゃねーか。話しかけろよ」
「なんか面白くて見ちゃった。すごいチャラそうな人だね」

僕はその言葉を無視し、彼女にどこへ行くかと問いかけた。

「特に決まってないけど…そこの遊園地行く?お化け屋敷。どう?」

お化け屋敷は別にそこまで興味がある訳ではなかった。

ついどういう造りかとか、仕組みかとかばかり気になってしまう。

「いいよ、行ってみよ」
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