この世界は、真夏でできている。
中に入ってすぐ、いかにも作り物で古びた声を上げた血だらけのゾンビ(?)が脅かしてきた。

あまりにも作り物すぎて、

怖いとか、驚くと言った感情さえも湧かなかったが、

隣の彼女はそれはもうお化け屋敷に連れてくるに適した人材かのごとく綺麗な悲鳴をあげた。

「なんであんたはそう余裕そうなの!?つまんない!」

「俺はお前のびっくりしてる姿見ててめちゃくちゃ愉快だけど」

性格悪っ!といい、彼女は小さな肩を震わせながら僕の左腕をがっしり掴んでいた。

少しだけ自分の腕と目線のやりどころに困り、

彼女の震えた肩を寄せようかと、頭を()ぎった。

だけど僕に、そんなことする勇気なんてないと
すぐに我に返る。
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