この世界は、真夏でできている。
「好きな人?」

下駄箱を出ると、私より低い目線の彼が、私を見つけるなりおっ、と手を挙げる。

同じクラスなのに、下駄箱で待ち合わせをするのは小っ恥ずかしくて、

少し新鮮だった。

通り過ぎてく下級生や、同級生とも絡みながら、

私たちは歩み親しんだこの道をゆっくり、ゆっくり歩いて行く。

もう少しでこの道ともお別れする事になるのか、と思うと、少しだけ寂しく思う。

私の家より先にある彼の家に近づいてきた頃、私は彼に問いかけたのだ。

彼はうーん、と腕を組み、いるぞ、と言った。
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