この世界は、真夏でできている。
ー今の僕ではきっと彼女には似つかわない。ー

家に着いてから、ここ最近の毎日の日課になりつつある例の小説を読み耽る。

ちょうどこの一文が現れ、今の僕に言われているようだった。

ーしかし、僕は自分を取り戻そうと必死で、まだ何も出来ていない。

見た目のこともそうだが、職すら見つけず、彼女が働きに出て、僕が簡単な家事をしている。

これじゃあまるでヒモだ。ー

確かに、今のこの何にも興味が無い、ただ日々を流れるように生きているだけではダメだ。

自分から少しでも、興味を持てるようなものを…。

はっ、となるように僕は、今朝、コンビニで並べられていた旅行のパンフレットを思い出し、

トートバックから取り出して開いた。

色々なスイーツやご当地グルメがずらっと紹介され、

淡い灯篭の写真が見開きで貼られている。

この灯篭を、彼女と一緒にみたい。

新しく、まずはやってみないことには始まらない。

すぐにバイト募集のサイトを見漁った。

急募、と週3日以上の文字を目に、とあるカフェの求人サイトを開く。

ここから電車で少しかかるが、コーヒーは好きだし、という

安直な理由ではあるがここを直ぐに応募した。

ちょうど、机の上に置かれたスマホが音を鳴らし、彼女からのメッセージを読む。

彼女に新しくバイトする節を伝えると、

えぇっ、の文字のすぐ後に、

数えるのが億劫になるぐらいのビックリマークとはてなマークが綴られていた。
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