寵愛のいる旦那との結婚がようやく終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい
「「うわあああっー‼︎」」


 突如、尋常じゃない悲鳴が、王都まで続く一本道から聞こえてきた。耳をすますと悲鳴だけではなく、動物の雄叫びまで声も聞こえた。

「ギャァ、モンスターが出たぁ。誰か助けてくれ!」

「きゃぁー‼︎」

「……くっ」
「ひぃーっ‼︎」

(モンスター?)
 
 私は急いで声が聞こえた方に走った。
 着いた先では何人もの冒険者らしき人達が、狼型の大型モンスターに襲われていた。

 他のモンスターの視野から離れ逃げ延びた冒険者達は、王都まで逃げて行く姿も見える。その達はモンスターが出たと騎士団を呼びに向かった人もいるだろう。私は気配を消して、茂みに身を潜めて様子を伺った。

 詳しくモンスターを観察すると、灰色の半狼半人が冒険者達を襲っていた。

「あれはワーウルフ⁉︎」

 近くの洞窟から出てきた、冒険者達を襲うニメートル以上の半狼半人のワーウルフ、奴の額には真っ黒な魔法陣が光って見えた。


 誰かに召喚された……いや違う、あれは束縛の召喚術だ。

 あの大型ワーウルフは無理矢理、この場に召喚されたんだ。本来、召喚は魔石と魔物の骨を使いモンスターを呼び寄せる。呼び寄せた術者はモンスターに自分の魔力が篭った物を差し出し、モンスター側がそれを受け取り契約を結ぶと習ったわ。


 それともう一つは力任せに呼ぶ、禁断の召喚術。


 召喚に魔石を使わず強引に魔力と魔物の骨だけで呼び寄せる。呼び寄せたモンスターを力任せに捻じ伏せて一方的に従わせる。

 あのモンスターの消し方は、額に光る魔法陣を壊せばいいのだけど。

「うわぁーっ‼︎」
「助けてくれ!」

 近くで召喚士がモンスターを操っているはず、先に召喚士を見つけた方がいいかな。

 その時、冒険者の女剣士が叫んだ。

「みんなはここから早く先に逃げて! 私はここに残って戦う!」

「ユリ、私達にはポーションも体力も無い状態だぞ!」

 女剣士はみんなを逃そうと叫んだが、仲間達は逃げなかった。彼らは見る限りモンスター駆除からの帰り、装備の鎧と剣もボロボロだ。武闘家モンクは傷だらけの拳を構えて叫んだ。

「自分はまだやれます!」


「「あなた達だけを置いてゆけない、自分もやれます!」」


 魔法使いも残りの魔力を使おうと詠唱に入る。それを守るように、回復系の魔法使いは杖を構えた。

「みんな、やるのだな……ここは私が君達を守る、シールド‼︎」

 壁役の人が魔力を使い盾を構えた。あの冒険者達は盾役が吹っ飛んだら終わりそうだ。盾役がワーウルフの攻撃に耐えれば、半狼半人ワーウルフ一匹なら、なんとか倒せるかもとわたしは茂みに隠れて見ていた。

「グルワァーアアン」

 突如、わたしがいる反対側の真横から、もう一匹の小型ワーウルフが飛びでて、盾役が張ったシールドに体当たりをした。ワーウルフの風圧でシールドが外れて詠唱中の魔法使いと、それを守っていた魔法使いがバランスを崩して吹っ飛ばされた。

 
「「キリア、ラトル!」」


 冒険者達の陣形が崩れてしまった。そこを狙いニ匹のワーウルフは冒険者達と陣形から離れた魔法使い達を襲う。
 
「ぐわぁぁー‼︎」
「ぎゃぁー」

 ワーウルフの強烈な爪攻撃を喰らい、冒険者と魔法使い達の苦痛に満ちた悲鳴を聞き。わたしは我慢ができず、茂みから走り出て魔法使い達の前で、小型のワーウルフに向かい持っていた木刀を構えた。

「盾役の人、もう一度シールドを張って! 手が空いている人はニ人は、傷付いた仲間をシールドの中に運んで!」
 
「あ、あぁ、わかった」

 盾役の人がもう一度シールドを張ったのを見て、私は目の前で睨み低く唸る、小型のワーウルフに飛びかかった。
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