寵愛のいる旦那との結婚がようやく終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい
十五
門番の兵士もワーウルフの元に行ったのか、いま門には騎士が一人しか立っていなかった。わたしは北口の門を抜けて家まで戻り、ダイニングの椅子に腰掛けた途端に、どっと疲れが込み上げた。
「ふぅっ、疲れた」
日課の訓練に出かけて、まさかワーウルフと戦う事になるなんて思わなかった。でもみんな怪我で終わってよかった……疲れを取ろうと重い体を動かし、お風呂を沸かして泥だらけの服を脱いだ。
うわっ……。
脱衣所の鏡に映ったのはアザだらけの体。大型ワーウルフの突進をくらった脇腹には紫色の大きなアザができていた。でも、プロテクトのお陰で幸い骨に異常はないみたい。
脱衣所からお風呂場に移り、浸かる前に桶でお湯をすくい体にかけ湯をかけた。ジワーッと肌の上を流れていくお湯。湯加減は丁度いいのだけど……クッ。
「い、イタイ、キズにしみる、こんな状態でお湯に浸かるなんて出来ない、無理、無理!」
湯船に浸かることを諦めて唸り声を上げながら、ザッとお湯を浴びお風呂を出た。……ナサから貰った傷薬。風呂に入るまえ洗面所に置いておいた、それを手に取り蓋を取ると、ほのかにラベンダーの香りが鼻をくすぐった。
「……いい香り」
それをタップリ指ですくいアザ全部に塗りこみ、食卓でミリア特性サンドイッチを軽めに食べて、寝室のベッドに倒れ込んで目をつむった。……しばらくして家の外に誰か来た気配がしたけど、目を開けるのもおっくうで……そのまま意識が遠のいた。
「ウグッ、い、いたッ、……ふうっ、クッ」
翌朝、脇腹にはしる痛みでパッチリ目が覚めた。そして肌寒い……わたしはお風呂から上がったあと、どうやら寝室のベッドに倒れ込み掛け布団の上で寝てしまったらしい。ブルルッと寒さに体が震えて、鈍い痛みと体がほてった感じがした。
(……やっぱり、怪我で熱が出たんだ。……フウッ、痛み止めを飲んでいこう)
と考えながら、ボーッとベッドの上で仰向けに寝転んでいた。ボーン、ボーン、リビング掛けた時計の鐘が七回鳴る。そろそろミリア亭に行く時間だ。重い体を起こして洗面所に向かった。
「あ、ああ、顔にアザができてる……」
昨日のお風呂のときに気付かなかった……右目下に紫に変色したアザができていた。脇腹のアザはどうなった? とパジャマを脱くと、ナサからもらった塗り薬が効いたのか、思いのほか脇のアザはひどくなっていなかった。
ホッ、よかった。
頬にできたアザは化粧で隠して……家を出る前に傷薬をもう一度を塗り、昨日の残りを食べて痛み止めを飲んだ。
手鏡を食卓の上に置き、頬のアザを隠すそうと化粧箱の蓋を開けた。中には近くの雑貨屋で見つけたピンク、黄色、青といった可愛い入れ物にはいった化粧品が入っている。その雑貨屋の店主が言うには"薬屋の魔女が野花、薬草から作られた化粧品で、肌にいい"と薦められて買ったものだ。
(匂いもほのかな花の香りだから、気にならないかな?)
食卓でアザをどうに隠して、次にクローゼットを開けて首の周りと袖、丈が長いワンピースを選んだ。魔力の回復がとぼしいけど、念のために回復魔法"ヒール"を掛けて、玄関前にかけてある姿見の前で確認して家をでた。
ミリア亭まで街中を歩き、街の人たちが忙しく朝の支度をしている、何も変わらない朝の風景にホッとした。
わたしはミリア亭の裏口で深呼吸をした。
今日の『【気まぐれご飯】』はハンバーグのトマトソースかけと半熟目玉焼き。あとはポテトサラダ、ご飯を盛ったワンプレートと、コーンスープを作る予定だ。
"よし、今日も頑張るぞ!"と、気合入れて裏口の扉を開けた。
「おはようございます、ミリアさん!」
「リーヤ、おはよう。……あら、今日は珍しく化粧をしてきたの?」
え、化粧をしたのがわかった?
自分では気付かないだけで、香りがするのかな?
「き、昨日の晩に部屋で転んで、頬にアザを作っちゃって、それを隠したんです……化粧、香りますか?」
そうミリアに伝えると、ガシッと両手で顔を掴まれた。
「匂いは……ほのかにしか香らないから、いいとして。こんな綺麗な顔にアザを作ったのかい? リーヤ、ちゃんと薬は付けた?」
ミリアの余りの慌てっぷりに少し驚きつつ。
「は、はい、塗り薬を塗ってきました」
「だったらいいけど……なんだか、頬も少し赤いね。風邪、引いてないかい?」
「はい、大丈夫です、風邪はひいてません」
そう微笑んで伝えた、ミリアは『風邪は万病のもとなんだから、無理しちゃダメだよ』と、頬から手を離して。
"リーヤ、仕込みを始めるよ"と、朝の仕込みが始まった。
ミリア亭の朝の厨房は慌ただしい、ミリアは定食の仕込みに入り、リーヤもそれを手伝いながら、自分の"気まぐれ"を作っていた。
(よかった体が動く、それに集中してるから痛みと熱を忘れれる)
ミリアが仕込み中の手を止めて、わたしの手元を除く。
「リーヤ、今日の"気まぐれ"は何を作るんだい?」
「今日はですね。トーロ牛とセルド豚の合い挽きを使ったハンバーグです」
「ハンバーグかいいね、ソースは何ソース?」
「トマトソースです、その上に半熟目玉焼きを乗せて、ご飯と付け合わせにポテトサラダ、あとコーンスープを作る予定です」
「トマトソースのハンバーグか、半熟目玉焼きもいいね。残ったら後で私にも作って」
珍しく"気まぐれ"をミリアさんが注文してくれた。
「ふぅっ、疲れた」
日課の訓練に出かけて、まさかワーウルフと戦う事になるなんて思わなかった。でもみんな怪我で終わってよかった……疲れを取ろうと重い体を動かし、お風呂を沸かして泥だらけの服を脱いだ。
うわっ……。
脱衣所の鏡に映ったのはアザだらけの体。大型ワーウルフの突進をくらった脇腹には紫色の大きなアザができていた。でも、プロテクトのお陰で幸い骨に異常はないみたい。
脱衣所からお風呂場に移り、浸かる前に桶でお湯をすくい体にかけ湯をかけた。ジワーッと肌の上を流れていくお湯。湯加減は丁度いいのだけど……クッ。
「い、イタイ、キズにしみる、こんな状態でお湯に浸かるなんて出来ない、無理、無理!」
湯船に浸かることを諦めて唸り声を上げながら、ザッとお湯を浴びお風呂を出た。……ナサから貰った傷薬。風呂に入るまえ洗面所に置いておいた、それを手に取り蓋を取ると、ほのかにラベンダーの香りが鼻をくすぐった。
「……いい香り」
それをタップリ指ですくいアザ全部に塗りこみ、食卓でミリア特性サンドイッチを軽めに食べて、寝室のベッドに倒れ込んで目をつむった。……しばらくして家の外に誰か来た気配がしたけど、目を開けるのもおっくうで……そのまま意識が遠のいた。
「ウグッ、い、いたッ、……ふうっ、クッ」
翌朝、脇腹にはしる痛みでパッチリ目が覚めた。そして肌寒い……わたしはお風呂から上がったあと、どうやら寝室のベッドに倒れ込み掛け布団の上で寝てしまったらしい。ブルルッと寒さに体が震えて、鈍い痛みと体がほてった感じがした。
(……やっぱり、怪我で熱が出たんだ。……フウッ、痛み止めを飲んでいこう)
と考えながら、ボーッとベッドの上で仰向けに寝転んでいた。ボーン、ボーン、リビング掛けた時計の鐘が七回鳴る。そろそろミリア亭に行く時間だ。重い体を起こして洗面所に向かった。
「あ、ああ、顔にアザができてる……」
昨日のお風呂のときに気付かなかった……右目下に紫に変色したアザができていた。脇腹のアザはどうなった? とパジャマを脱くと、ナサからもらった塗り薬が効いたのか、思いのほか脇のアザはひどくなっていなかった。
ホッ、よかった。
頬にできたアザは化粧で隠して……家を出る前に傷薬をもう一度を塗り、昨日の残りを食べて痛み止めを飲んだ。
手鏡を食卓の上に置き、頬のアザを隠すそうと化粧箱の蓋を開けた。中には近くの雑貨屋で見つけたピンク、黄色、青といった可愛い入れ物にはいった化粧品が入っている。その雑貨屋の店主が言うには"薬屋の魔女が野花、薬草から作られた化粧品で、肌にいい"と薦められて買ったものだ。
(匂いもほのかな花の香りだから、気にならないかな?)
食卓でアザをどうに隠して、次にクローゼットを開けて首の周りと袖、丈が長いワンピースを選んだ。魔力の回復がとぼしいけど、念のために回復魔法"ヒール"を掛けて、玄関前にかけてある姿見の前で確認して家をでた。
ミリア亭まで街中を歩き、街の人たちが忙しく朝の支度をしている、何も変わらない朝の風景にホッとした。
わたしはミリア亭の裏口で深呼吸をした。
今日の『【気まぐれご飯】』はハンバーグのトマトソースかけと半熟目玉焼き。あとはポテトサラダ、ご飯を盛ったワンプレートと、コーンスープを作る予定だ。
"よし、今日も頑張るぞ!"と、気合入れて裏口の扉を開けた。
「おはようございます、ミリアさん!」
「リーヤ、おはよう。……あら、今日は珍しく化粧をしてきたの?」
え、化粧をしたのがわかった?
自分では気付かないだけで、香りがするのかな?
「き、昨日の晩に部屋で転んで、頬にアザを作っちゃって、それを隠したんです……化粧、香りますか?」
そうミリアに伝えると、ガシッと両手で顔を掴まれた。
「匂いは……ほのかにしか香らないから、いいとして。こんな綺麗な顔にアザを作ったのかい? リーヤ、ちゃんと薬は付けた?」
ミリアの余りの慌てっぷりに少し驚きつつ。
「は、はい、塗り薬を塗ってきました」
「だったらいいけど……なんだか、頬も少し赤いね。風邪、引いてないかい?」
「はい、大丈夫です、風邪はひいてません」
そう微笑んで伝えた、ミリアは『風邪は万病のもとなんだから、無理しちゃダメだよ』と、頬から手を離して。
"リーヤ、仕込みを始めるよ"と、朝の仕込みが始まった。
ミリア亭の朝の厨房は慌ただしい、ミリアは定食の仕込みに入り、リーヤもそれを手伝いながら、自分の"気まぐれ"を作っていた。
(よかった体が動く、それに集中してるから痛みと熱を忘れれる)
ミリアが仕込み中の手を止めて、わたしの手元を除く。
「リーヤ、今日の"気まぐれ"は何を作るんだい?」
「今日はですね。トーロ牛とセルド豚の合い挽きを使ったハンバーグです」
「ハンバーグかいいね、ソースは何ソース?」
「トマトソースです、その上に半熟目玉焼きを乗せて、ご飯と付け合わせにポテトサラダ、あとコーンスープを作る予定です」
「トマトソースのハンバーグか、半熟目玉焼きもいいね。残ったら後で私にも作って」
珍しく"気まぐれ"をミリアさんが注文してくれた。