寵愛のいる旦那との結婚がようやく終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい
十九
 フライパンのなかで、ふっくらジューシーに焼き上がったハンバーグ。フライ返しで取り出してプレートに盛り付けてトマトソースをかけた。その横にレタスを皿にひいてポテトサラダとご飯を盛り付けてパセリを振り、コーンスープはスープカップによそった。
 
「アトール、できたわ。どうぞ食べてみて」
「ありがとう、リイーヤ姉さん。ンン、いい香り、美味しそうだ」

 プレートをアトールに渡して、ナサとミリア、二人分のハンバーグプレートとコンスープはカウンターに置き。ハンバーグが半分ずつ乗ったプレートとスープカップをトレーに乗せて、アサトとロカが座るテーブル席にもっていく。

「これはアサトさんとロカさんの分です。ごめんね、これでハンバーグが最後だから半分なの……その分、ご飯とポテトサラダ、コーンスープは多めに盛ったから」

「おおっ、サンキュー。俺たちはミリアのステーキ食べたあとだから、コレぐらいがちょうどいい」
「そうですね、リーヤありがとうございます。ンン、いい匂い」

 アサトとロカが食べ出したのをみて、さっきから物静かなカヤとリヤはとみれば? あ、奥のソファーテーブルで二人仲良く、お揃いのブランケットに丸まって寝ている。

「リーヤ、いただきます」
「どうぞ、ミリアさん」

 ミリアはアサトとロカの座るテーブルで、二人と会話を楽しみながら食べ始めた。わたしも厨房から自分のプレートを持ってナサの隣に座る。

「姉さん、いただきます」
「アトール、わたしを待っていたの? フフ、ありがとう。どうぞ、召しあがれ」

 ハンバーグをフォークとナイフで切り、一口食べて、アトールは口元を緩ました。

「美味しいよ、リイーヤ姉さん」

「ほんと? どれどれ、わたしもいただきます。……ンン、ハンバーグがふっくらジューシーで美味しい。トマトソースもハンバーグにピッタリあっているわ」

「シッシシ、美味いなぁ。リーヤ、またこれ作ってくれる?」

「いいわよって、ナサのハンバーグもう無いじゃない」

 珍しくナサはハンバーグを気に入ったみたいで、ミリアのステーキを食べずに、二つ目のハンバーグもペロッと平らげていた。

「美味いからな。リーヤの一口ちょうだい」

 隣で"くれと"大きな口を開けるナサ。

「ダメよ。ナサはふた皿食べたんだから、これはわたしのハンバーグです」

 ナイフで大きく切ったハンバーグを口いっぱいに頬張った。

「シッシシ、残念」

 と笑い。付け合わせのポテトサラダとコーンスープを、美味しそうに飲み始めた。アトールが食事中に何か思い出して、あ、っと声を上げてわたしを見た。
 
「そうだ、姉さんは知っている? ガレーン国の北門近くで強制召喚された、ワーウルフがニ匹も出たんだって。リルガルド国の騎士団でも話題になっているんだ……今日、僕がガレーン国に来た理由は、騎士団長に名を受けてその噂を集めにきたんだ」

 え、

「強制召喚、ワーウルフの噂集め!! グッ……ゴホ、ゴホッ、ゴホッ」

「リイーヤ姉さん、大丈夫?」

「おい、リーヤ」
「だ、大丈夫……グフッ」

 アトールの口から"ワーウルフ"の言葉がでて、驚きすぎてむせた。リルガルド国にもワーウルフの話が伝わっているんだ。

「リーヤ、水だ!」
「ありがとう、ナサ」

 ナサが慌てて水を渡してくれた、それを受け取り一気に飲み干したのだった。
< 20 / 99 >

この作品をシェア

pagetop