寵愛のいる旦那との結婚がようやく終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい
三十
リモーネがミリア亭を出たと同時に、アサト達が出入り口ですれ違った。
「失礼」
すれ違い様に頭を下げて出ていく、リモーネをアサトとロカは見ている。
「あれ、いまの第三部隊のリモーネ隊長じゃないか?」
「はい、いま女性にいちばん一番人気、お婿さんにしたいナンバーワンの三番隊の隊長ですね」
「へー、いらない情報だな」
アサト達はお店の扉を開けたままで、リモーネの帰っていく背中をしばらく眺めていた。そして、不思議な顔をして店に入ってきたアサトとロカに、わたしは彼とは学園のときの同級生だと説明した。
「はぁ⁉︎ リモーネ隊長はリーヤの学園の同級生なのか……若いな、彼は歳の割に落ち着いてると名高いだな」
「二十歳、お若若しいですねですか……さぞかし、学園の頃のリーヤは今と変わらず、可愛らしかったのでしょうね」
「……ロカ、お前は」
呆れた顔のアサトと、腕を組み頷くロカ。
ナサはそんな二人を笑いながら眺めていた。
「今日は新鮮な肉が行商から手に入った、いまからじゃんじゃん焼くよ!」
カウンターの上にミリアはドーンと、分厚いお肉の塊をのせた、その肉にみんなは釘付けだ。アサト達の後に遅れてやってきたカヤとリヤもカウンターに集まった。
「おお、美味そう」
「これは、楽しみですね」
「やった、分厚いお肉だ」
「お肉」
「シッシシ、今日のは特に分厚いな」
昼食、ミリア特製特大ステーキと大盛りご飯。
厚切りのステーキなのに、ミリアにかかれば肉は柔らかく、ナイフできれば肉汁が溢れる魅惑のステーキになる。
わたしは横にいて焼き方を習いながら、焼き上がったお肉の横に蒸したジャガイモと、バターでソテーしたアスパラを盛り付けていた。
(……いい匂い、たまらない)
「リーヤ、ステーキ肉が焼けたよ、じゃんじゃん運んで」
「はい」
皿にズッシリ重いステーキを運ぶと、みんなはうれしそうに『いただきます』と大きな口で豪快にかぶりついた。
「おお、これは美味い!」
「柔らかくて美味しいです」
「「うまっ、お肉!」」
「シッシシ、たまらん」
肉も良いけど、玉ねぎが煮込まれてとろとろスープもいいなぁ。パンをしっかり食べたけど、これはお腹が空いてくる。
「ほらっ、リーヤもたんとお食べ、みんなのよりは小さいけどね」
と、わたしに厚いステーキが乗った皿を渡した。
「ミリアさん、いただきます」
「どうぞ、お代はちゃんと今度のお給料から引いとくね」
「はい!」
ミリアはそう言うけど、今まで一度も給料からは引かれたことがない。いいのかなって思うと『遠慮しなくて、いいんだよ』と、ミリアは笑顔で言ってくれる。
肉を持ち、カウンター席のナサの隣に座た。
「いただきます」
ナイフに力を入れなくても肉がスーッと切れて、噛めば噛むほど肉汁が溢れてくる。ステーキソースは赤ワイン、バターに塩胡椒、にんにくと玉ねぎのソース。
「ンン、すごく美味しい」
「シシシッ、美味いな」
ナサと見合ってにっこり笑った。
厨房の奥でミリアは赤ワインを楽しみながら、焼いた肉を摘み、もう一枚、もう一枚とみんなの注文に答えて肉を焼いていた。
あっという間に、分厚い肉の塊はみんなの胃袋の中に消えた。
「はあ、お肉美味しかった。ミリアさん、ご馳走様でした」
「ほんと、美味しい肉だったね」
みんなも各々、満足げにお腹を撫でていた。
「ふぅっ、くった、食った」
「美味しかったね」
「また食べたいね」
「ミリアさん、とても美味しいお肉でした。ごちそうさま」
「はあ、美味かった」
わたしは食べ終わったみんなの皿を片付けて、ミリアの特製コーヒーを運んだ。しばらく、みんなの楽しげな話し声が聞こえていたけど、それはだんだん寝息にかわっていく。
(みんな、おやすみなさい)
寝ている間に豚バラを使ったスタミナサンドの夕食をミリアと作り、それが終わると、ミリアは特製のコーヒーを入れてくれた。
「リーヤ、ご苦労様」
「ご苦労様です、ミリアさん」
カウンタ席に戻り、お砂糖一粒とミルク多めのコーヒー、一口飲めばフウッと落ち着く。わたしはコーヒーを飲みきる頃に眠気を感じた。
「ふわぁっ」
「デカい、あくびだな」
「だって、今日はナサとアサトさんの訓練の風景も見たし、中央区まで歩いたし……昔の知り合いに会って……ね、驚いたし」
言葉はしどろもどろで瞼がものすごく重く、うつらうつらする、わたし隣のナサはまだ珍しく起きていた。
「スースー……」
「おい、リーヤ」
「あらっ、珍しく寝落ちしちゃったね」
モフモフなナサの肩に寄りかかって……わたしは寝息を立てた。
「シッシシ、寝ちまったか。なんて気持ち、よさ……そ、う」
ナサもガタンと豪快な音を出して、カウンターで寝落ちした。
+
……
………
「……リーヤ」
「う、んっ…」
「おい、起きろ」
「ん?」
「リーヤ、目覚めたか?」
「うん、ナサ……あれ? わたし、寝ちゃってた」
ナサに起こされるまで彼の肩に寄りかかって寝ていた。他のみんなはすでに訓練に戻ったのか、店の中にはナサとミリアの姿しかない。
「ナサ、ごめん」
「いいよ、さてとオレも訓練に戻るな」
のっそり立って、入り口に立てかけた自分の武器を取り。
「ミリアとリーヤ、気をつけて帰れよ」
「ナサも訓練と警備がんばってね」
「ああ、リーヤは帰ってしっかり休めよ」
手を振り、遅れて訓練に戻って行った。
「さて、私たちも店を閉めて帰るかね」
「はい、寝てしまってすみません。ナサにも悪いことしちゃった……」
訓練に遅れて注意を受けなきゃいいけど……
「気にしなくていいよ。ナサはリーヤの寝顔を楽しそうに終始、眺めているたからさ」
「わたしの寝顔を?」
「そう、アサト達が戻るぞって言っても、リーヤを起こさず、寝顔を見てたのはナサの方だからね。リーヤお疲れさま」
ミリアは楽しそうに、そう呟き帰って行った。
「失礼」
すれ違い様に頭を下げて出ていく、リモーネをアサトとロカは見ている。
「あれ、いまの第三部隊のリモーネ隊長じゃないか?」
「はい、いま女性にいちばん一番人気、お婿さんにしたいナンバーワンの三番隊の隊長ですね」
「へー、いらない情報だな」
アサト達はお店の扉を開けたままで、リモーネの帰っていく背中をしばらく眺めていた。そして、不思議な顔をして店に入ってきたアサトとロカに、わたしは彼とは学園のときの同級生だと説明した。
「はぁ⁉︎ リモーネ隊長はリーヤの学園の同級生なのか……若いな、彼は歳の割に落ち着いてると名高いだな」
「二十歳、お若若しいですねですか……さぞかし、学園の頃のリーヤは今と変わらず、可愛らしかったのでしょうね」
「……ロカ、お前は」
呆れた顔のアサトと、腕を組み頷くロカ。
ナサはそんな二人を笑いながら眺めていた。
「今日は新鮮な肉が行商から手に入った、いまからじゃんじゃん焼くよ!」
カウンターの上にミリアはドーンと、分厚いお肉の塊をのせた、その肉にみんなは釘付けだ。アサト達の後に遅れてやってきたカヤとリヤもカウンターに集まった。
「おお、美味そう」
「これは、楽しみですね」
「やった、分厚いお肉だ」
「お肉」
「シッシシ、今日のは特に分厚いな」
昼食、ミリア特製特大ステーキと大盛りご飯。
厚切りのステーキなのに、ミリアにかかれば肉は柔らかく、ナイフできれば肉汁が溢れる魅惑のステーキになる。
わたしは横にいて焼き方を習いながら、焼き上がったお肉の横に蒸したジャガイモと、バターでソテーしたアスパラを盛り付けていた。
(……いい匂い、たまらない)
「リーヤ、ステーキ肉が焼けたよ、じゃんじゃん運んで」
「はい」
皿にズッシリ重いステーキを運ぶと、みんなはうれしそうに『いただきます』と大きな口で豪快にかぶりついた。
「おお、これは美味い!」
「柔らかくて美味しいです」
「「うまっ、お肉!」」
「シッシシ、たまらん」
肉も良いけど、玉ねぎが煮込まれてとろとろスープもいいなぁ。パンをしっかり食べたけど、これはお腹が空いてくる。
「ほらっ、リーヤもたんとお食べ、みんなのよりは小さいけどね」
と、わたしに厚いステーキが乗った皿を渡した。
「ミリアさん、いただきます」
「どうぞ、お代はちゃんと今度のお給料から引いとくね」
「はい!」
ミリアはそう言うけど、今まで一度も給料からは引かれたことがない。いいのかなって思うと『遠慮しなくて、いいんだよ』と、ミリアは笑顔で言ってくれる。
肉を持ち、カウンター席のナサの隣に座た。
「いただきます」
ナイフに力を入れなくても肉がスーッと切れて、噛めば噛むほど肉汁が溢れてくる。ステーキソースは赤ワイン、バターに塩胡椒、にんにくと玉ねぎのソース。
「ンン、すごく美味しい」
「シシシッ、美味いな」
ナサと見合ってにっこり笑った。
厨房の奥でミリアは赤ワインを楽しみながら、焼いた肉を摘み、もう一枚、もう一枚とみんなの注文に答えて肉を焼いていた。
あっという間に、分厚い肉の塊はみんなの胃袋の中に消えた。
「はあ、お肉美味しかった。ミリアさん、ご馳走様でした」
「ほんと、美味しい肉だったね」
みんなも各々、満足げにお腹を撫でていた。
「ふぅっ、くった、食った」
「美味しかったね」
「また食べたいね」
「ミリアさん、とても美味しいお肉でした。ごちそうさま」
「はあ、美味かった」
わたしは食べ終わったみんなの皿を片付けて、ミリアの特製コーヒーを運んだ。しばらく、みんなの楽しげな話し声が聞こえていたけど、それはだんだん寝息にかわっていく。
(みんな、おやすみなさい)
寝ている間に豚バラを使ったスタミナサンドの夕食をミリアと作り、それが終わると、ミリアは特製のコーヒーを入れてくれた。
「リーヤ、ご苦労様」
「ご苦労様です、ミリアさん」
カウンタ席に戻り、お砂糖一粒とミルク多めのコーヒー、一口飲めばフウッと落ち着く。わたしはコーヒーを飲みきる頃に眠気を感じた。
「ふわぁっ」
「デカい、あくびだな」
「だって、今日はナサとアサトさんの訓練の風景も見たし、中央区まで歩いたし……昔の知り合いに会って……ね、驚いたし」
言葉はしどろもどろで瞼がものすごく重く、うつらうつらする、わたし隣のナサはまだ珍しく起きていた。
「スースー……」
「おい、リーヤ」
「あらっ、珍しく寝落ちしちゃったね」
モフモフなナサの肩に寄りかかって……わたしは寝息を立てた。
「シッシシ、寝ちまったか。なんて気持ち、よさ……そ、う」
ナサもガタンと豪快な音を出して、カウンターで寝落ちした。
+
……
………
「……リーヤ」
「う、んっ…」
「おい、起きろ」
「ん?」
「リーヤ、目覚めたか?」
「うん、ナサ……あれ? わたし、寝ちゃってた」
ナサに起こされるまで彼の肩に寄りかかって寝ていた。他のみんなはすでに訓練に戻ったのか、店の中にはナサとミリアの姿しかない。
「ナサ、ごめん」
「いいよ、さてとオレも訓練に戻るな」
のっそり立って、入り口に立てかけた自分の武器を取り。
「ミリアとリーヤ、気をつけて帰れよ」
「ナサも訓練と警備がんばってね」
「ああ、リーヤは帰ってしっかり休めよ」
手を振り、遅れて訓練に戻って行った。
「さて、私たちも店を閉めて帰るかね」
「はい、寝てしまってすみません。ナサにも悪いことしちゃった……」
訓練に遅れて注意を受けなきゃいいけど……
「気にしなくていいよ。ナサはリーヤの寝顔を楽しそうに終始、眺めているたからさ」
「わたしの寝顔を?」
「そう、アサト達が戻るぞって言っても、リーヤを起こさず、寝顔を見てたのはナサの方だからね。リーヤお疲れさま」
ミリアは楽しそうに、そう呟き帰って行った。