寵愛のいる旦那との結婚がようやく終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい
三十一
今日の気まぐれは、昨日買ってきた食パンを使った、ホットサンドとサラダ、ポタージュスープ。ワサさんと息子さんのセヤ君から美味しいと言われて、またまた有頂天のリーヤです。
(フフッ、照り焼きチキンの味付けがよかったのかな? それとも卵かな?)
バターを塗ったパンにキャベツの千切り、薄切りにした照り焼きチキンを並べてマヨネーズにからしチーズを挟んだホットサンド。
もう一つはゆで卵にマヨネーズを挟んだ、シンプルな卵ホットサンドと、行商人のお兄さんが持って来た、鬼人産ジャロイモで作ったポタージュスープ
「リーヤの照り焼きチキンの作るときの、手際が上手くなったね」
「ほんとうですか」
(やった、ミリアさんに褒められた。家で何度も練習したもの)
最初は分量を間違えて甘過ぎたり、チキンに火を入れ過ぎて硬くなったり、ここまで来るのに大変だった。
店の時計が鳴る、一時半か……リモーネ君は来るって言ってたけど、騎士団の隊長さんだから忙しいのだろう。
(無理せず、また明日来ればいい)
明日は肉団子ごろごろミートスパゲッティ、ペペロンチーノ、覚えたてのカルボナーラ、ピザもいいなぁと、明日のメニューを考えながら流し台て洗い物をしていた。
「リーヤ、それ終わったら休憩してね」
「はーい」
ミリアはカウンターでコーヒーを飲みながら情報紙を広げていた。この洗い物が終わったらホットサンドとコーヒーも入れて……その時、カランコロンとドアベルが鳴る。
「ハァハァ……まだ、いいか?」
その声にカウンター席にいたミリアは振り向き、いま入ってきた人を確認してた。
「あら、昨日の三番隊の隊長さん、いらっしゃい」
店からミリアの声が聞こえてきた。いま三番隊の隊長と言った、店にリモーネ君が来たんだ。水道を止めて厨房から出ると、重い鎧で走って来たらしく息を切らして汗を拭った。
「すまない、リイーヤ。今日は少し立て込んでいて遅くなった」
「おつかれさま、早く座って休んで」
「ああ」
カウンターにフウッと息を吐き座った、リモーネの前に水を出して横におしぼりを置いた。
「はい、おしぼりとお水」
リモーネはコップを取ると、一気に水を煽った。
「フー、ありがとう、気まぐれを頼む」
「かしこまりました、いま作るから待ってて」
わたしが気まぐれの支度を始めると、カウンターに座るミリアとリモーネは何やら話を始めたようだ。話が気になる、手を動かしながら耳をカウンター席に向けた。
「君は、リモーネ君だっけ? 三番隊の隊長だっけ?」
「はい、そうです」
「それじゃ、次に狙うのはニ番隊、それとも一番隊かな?」
「自分は一番隊を希望しています」
一番隊って、国王陛下と王妃殿下を守る為の部隊。切れ者が集まる部隊だと昔に聞いたことがある。剣の腕前は一流、状況判断にも優れて、それに合わせた指示も出せる人じゃないと無理なのだとか。
「一番隊かぁ。いま、一番隊はグレンだっけ? 総隊長はギルギバート様?」
「よくご存知で、一番隊はグレン隊長、騎士団の総隊長はギルギバード隊長です」
「へえ、あのニ人も偉くなったもんだ。それと新聞に書いてある通りだと、次の国王祭の時に国王陛下が変わるのかい?」
(国王陛下が変わる?)
「そうですね。次の国王祭で皇太子が王位継承して、次の国王になります」
三ヶ月後の国王祭で国王が変わるんだ。
「でも、皇太子って二十七歳なのに婚姻、いや婚約者もいないって話だけど……」
「よくご存知で、そのとおりです」
皇太子に婚約者がいないのか……なんでだろ。皇太子の婚約者って、王子の頃それも子供の時には決まっているはず。わたしも八歳の時に婚約者候補の通達が来たわ。最終には国王陛下が決めた、名門公爵家の令嬢が選ばれていた。
「まあ、皇太子に婚約者がいようがいなくても、私達平民に王宮の話は関係ないけどね。ただ、税金さえ上がらなければいいよ」
「そうですよね。はい、リモーネ君気まぐれ出来たよ。熱いから気を付けて」
「ありがとう、リイーヤ」
リモーネは照り焼きチキンのホットサンドを手に取り、サクッと一口かじった。
「ン、美味しい」
「ほんと、よかった」
「いい匂い、美味しそうだね。リーヤ、私にもホットサンド作って、リモーネ君を見てたら食べたくなった、後コーヒーもお願い!」
「いいですけど、もうすぐアサトさん達来る時間ですよ」
「そう? あら、ほんとだ。コーヒーは後にするか、ホットサンドは作って食べながら調理するから」
「はい、わかりました」
そしてニ時前にやって来たアサト達は、カウンター席に座るリモーネを見て、店の出入り口で足を止めた。
「ゲッ、また、三番隊の隊長が来ているのか」
ナサは眉をひそめ、アサトとロカはリモーネに頭を下げた。
「お疲れさまです、リモーネ隊長」
「お疲れ様です、中央区で起きた貴族同士の揉め事はもういいのですか?」
ロカの問いに、リモーネは食事の手を止めて応える。
「あれか。アレはすれ違い様に馬車同士がぶつかりそうになっただけの、ただの口喧嘩だ」
「ぶつかったと聞いていてのですが違うのですね。でも、腹を立てた貴族に殴られたと聞いとのですが?」
「一方的に殴られたのではない、止めに入って手が当たってしまったんだ。従者の傷は口を切る程度だったから手当てして、後日、貴族、弁護士らが話し合いする事で決着が付いた」
「それは、ご苦労さまでした。その従者は私の昔からの知人だったので、少し気になりました。隊長様の食事の手を止めてしまい、すみません」
「いや、気にしなくていい」
話が終わるとロカはホッとした様子で、アサトがいるテーブルに着き、リモーネは食事を再開させた。
(ロカさんの知り合い、その従者は亜人だったのかな? いまは昔と違い、最近になってから亜人も許可を貰えれば、わずかな人たちだけど北区以外で働けるようになったと聞いた……けど。まだ亜人を見ただけで暴力を振るう人もいると聞く、ロカさんは知り合いが理不尽に殴られたのではないかと心配したんだ)
リモーネはみんなに注目されてもまったく気にせず、ホットサンドとポタージュスープ、サラダを食べて。食後のコーヒーもゆっくり味わい『また明日来る』と言って帰って行った。
ほんとうに、次の日もリモーネは同じ時間に来て、アサト達と会うのだった。
(フフッ、照り焼きチキンの味付けがよかったのかな? それとも卵かな?)
バターを塗ったパンにキャベツの千切り、薄切りにした照り焼きチキンを並べてマヨネーズにからしチーズを挟んだホットサンド。
もう一つはゆで卵にマヨネーズを挟んだ、シンプルな卵ホットサンドと、行商人のお兄さんが持って来た、鬼人産ジャロイモで作ったポタージュスープ
「リーヤの照り焼きチキンの作るときの、手際が上手くなったね」
「ほんとうですか」
(やった、ミリアさんに褒められた。家で何度も練習したもの)
最初は分量を間違えて甘過ぎたり、チキンに火を入れ過ぎて硬くなったり、ここまで来るのに大変だった。
店の時計が鳴る、一時半か……リモーネ君は来るって言ってたけど、騎士団の隊長さんだから忙しいのだろう。
(無理せず、また明日来ればいい)
明日は肉団子ごろごろミートスパゲッティ、ペペロンチーノ、覚えたてのカルボナーラ、ピザもいいなぁと、明日のメニューを考えながら流し台て洗い物をしていた。
「リーヤ、それ終わったら休憩してね」
「はーい」
ミリアはカウンターでコーヒーを飲みながら情報紙を広げていた。この洗い物が終わったらホットサンドとコーヒーも入れて……その時、カランコロンとドアベルが鳴る。
「ハァハァ……まだ、いいか?」
その声にカウンター席にいたミリアは振り向き、いま入ってきた人を確認してた。
「あら、昨日の三番隊の隊長さん、いらっしゃい」
店からミリアの声が聞こえてきた。いま三番隊の隊長と言った、店にリモーネ君が来たんだ。水道を止めて厨房から出ると、重い鎧で走って来たらしく息を切らして汗を拭った。
「すまない、リイーヤ。今日は少し立て込んでいて遅くなった」
「おつかれさま、早く座って休んで」
「ああ」
カウンターにフウッと息を吐き座った、リモーネの前に水を出して横におしぼりを置いた。
「はい、おしぼりとお水」
リモーネはコップを取ると、一気に水を煽った。
「フー、ありがとう、気まぐれを頼む」
「かしこまりました、いま作るから待ってて」
わたしが気まぐれの支度を始めると、カウンターに座るミリアとリモーネは何やら話を始めたようだ。話が気になる、手を動かしながら耳をカウンター席に向けた。
「君は、リモーネ君だっけ? 三番隊の隊長だっけ?」
「はい、そうです」
「それじゃ、次に狙うのはニ番隊、それとも一番隊かな?」
「自分は一番隊を希望しています」
一番隊って、国王陛下と王妃殿下を守る為の部隊。切れ者が集まる部隊だと昔に聞いたことがある。剣の腕前は一流、状況判断にも優れて、それに合わせた指示も出せる人じゃないと無理なのだとか。
「一番隊かぁ。いま、一番隊はグレンだっけ? 総隊長はギルギバート様?」
「よくご存知で、一番隊はグレン隊長、騎士団の総隊長はギルギバード隊長です」
「へえ、あのニ人も偉くなったもんだ。それと新聞に書いてある通りだと、次の国王祭の時に国王陛下が変わるのかい?」
(国王陛下が変わる?)
「そうですね。次の国王祭で皇太子が王位継承して、次の国王になります」
三ヶ月後の国王祭で国王が変わるんだ。
「でも、皇太子って二十七歳なのに婚姻、いや婚約者もいないって話だけど……」
「よくご存知で、そのとおりです」
皇太子に婚約者がいないのか……なんでだろ。皇太子の婚約者って、王子の頃それも子供の時には決まっているはず。わたしも八歳の時に婚約者候補の通達が来たわ。最終には国王陛下が決めた、名門公爵家の令嬢が選ばれていた。
「まあ、皇太子に婚約者がいようがいなくても、私達平民に王宮の話は関係ないけどね。ただ、税金さえ上がらなければいいよ」
「そうですよね。はい、リモーネ君気まぐれ出来たよ。熱いから気を付けて」
「ありがとう、リイーヤ」
リモーネは照り焼きチキンのホットサンドを手に取り、サクッと一口かじった。
「ン、美味しい」
「ほんと、よかった」
「いい匂い、美味しそうだね。リーヤ、私にもホットサンド作って、リモーネ君を見てたら食べたくなった、後コーヒーもお願い!」
「いいですけど、もうすぐアサトさん達来る時間ですよ」
「そう? あら、ほんとだ。コーヒーは後にするか、ホットサンドは作って食べながら調理するから」
「はい、わかりました」
そしてニ時前にやって来たアサト達は、カウンター席に座るリモーネを見て、店の出入り口で足を止めた。
「ゲッ、また、三番隊の隊長が来ているのか」
ナサは眉をひそめ、アサトとロカはリモーネに頭を下げた。
「お疲れさまです、リモーネ隊長」
「お疲れ様です、中央区で起きた貴族同士の揉め事はもういいのですか?」
ロカの問いに、リモーネは食事の手を止めて応える。
「あれか。アレはすれ違い様に馬車同士がぶつかりそうになっただけの、ただの口喧嘩だ」
「ぶつかったと聞いていてのですが違うのですね。でも、腹を立てた貴族に殴られたと聞いとのですが?」
「一方的に殴られたのではない、止めに入って手が当たってしまったんだ。従者の傷は口を切る程度だったから手当てして、後日、貴族、弁護士らが話し合いする事で決着が付いた」
「それは、ご苦労さまでした。その従者は私の昔からの知人だったので、少し気になりました。隊長様の食事の手を止めてしまい、すみません」
「いや、気にしなくていい」
話が終わるとロカはホッとした様子で、アサトがいるテーブルに着き、リモーネは食事を再開させた。
(ロカさんの知り合い、その従者は亜人だったのかな? いまは昔と違い、最近になってから亜人も許可を貰えれば、わずかな人たちだけど北区以外で働けるようになったと聞いた……けど。まだ亜人を見ただけで暴力を振るう人もいると聞く、ロカさんは知り合いが理不尽に殴られたのではないかと心配したんだ)
リモーネはみんなに注目されてもまったく気にせず、ホットサンドとポタージュスープ、サラダを食べて。食後のコーヒーもゆっくり味わい『また明日来る』と言って帰って行った。
ほんとうに、次の日もリモーネは同じ時間に来て、アサト達と会うのだった。