寵愛のいる旦那との結婚がようやく終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい
四十二
 いつもは落ち着いた雰囲気のミカ。彼は隣町から急いでミリア亭に来たらしく、緑色の長い髪を乱して珍しく汗をかき焦っている。

「ミカ、どうした?」

 アサトがミカに聞くと。
 息を整えながらミカは、

「あのね……隣町まで品を仕入れに行ってね、同業者の友達に話を聞いたんだけど……クフッ……フウッ」

「リーヤ、ミカに水を渡して」
「はい」

 厨房のミリアから渡された水をミカに渡すと、彼は一気にコップの水を飲み干した。

「ミリア、リーヤ……ありがとう」

 一息をついてから話をしだした。

「その友達に聞いた話なんだけど……二ヶ月前くらいに、ガレーン国から遠い南のニーフルという小国で、特殊なモンスター骨を何者かに盗まれたんだって」

(特殊なモンスターの骨が盗まれた? 一ヶ月前にミリア亭に来たアトールがはなした話も、何者かにモンスター骨が盗まれたと言っていたわ?)

 みんなは"盗まれたモンスターの骨"と聞き、何か思い当たったらしく、ミカをテーブルに呼び真剣にその話に耳を傾けてた。

「ニーフル国? ミカ、もっと詳しく教えろ」

 コクリとアサトに頷き。

「ニーフル国ではかなり有名な収集家で、骨の個展、博物館なども作った人で……今回、盗まれたのは屋敷の金庫に保管してあった特殊な骨ばかりで、犯人はその収集家の人を殺して奪っていったらしい」

「「収集家を殺した!!」」

 アトールから聞いていた内容よりも、詳しく話すミカ。

「ミカの友達は詳しいな」 

「うん、彼はニーフル国の隣国、魔法大国スルートールで魔導具の店を構えているからね。ニーフル国で雑貨屋を営む同業者から、この話を聞いたんだって」

「なんだと、君の友はあの入国も難しい、魔法大国スルートールに店があるのか!」  

 カートラお兄様がいきなり声を荒げた。

「え、そうだけど…………誰?」

 大柄で見知らぬ男性に話しかけられたミサはたじろいた。そんな、ミカにわたしは慌てて紹介をした。

「ミカさん。こちらがわたしのお兄様で、もう人方はお友達の方です」

「え、リーヤのお兄さんとお友達?」

 そうだ、とカートラお兄様とランドル様はミカに頭を下げた。

「いきなり話に割って入り、驚かせてすまない。俺はリイーヤの兄のカートラと言う。隣国リルガルド国で騎士団長を務めている」

「私は副団長のランドルと言います」

「僕はガレーン国の北区で雑貨屋を営む、エルフのミカと言います」

 お互いの自己紹介を済ませて、カートラお兄様とランドル様もこの話に参加して、ランドル様は魔法大国スルートールの話を始めた。

「あの魔法大国スルートールは大魔法使いマーミアが収める国。魔法が使える者は簡単に魔法検査だけで入国出来ますが、使えない者は厳密な審査と身辺検査をする国で、中々入国が面倒な国ですよね」
 
 ランドルの話に深く頷くお兄様。

「そうだな……俺とランドルはその収集家の話をニーフル国で聞いた後。隣国スルートールに国王陛下から預かった密書を届けにランドルと向かったが…………魔法が使えない俺は入国するのにスルートール国は、リルガルド国まで封書を魔法で飛ばして、本当にリルガルド国の騎士団長か公爵家の長子かも調べられて……早朝から、丸一日かかって入国できたんだ」

「……ウゲッ、面倒な国だな。俺とナサ、リヤとカヤは絶対にその国には入国出来ないな」

 アサトが眉をひそめた。
"本当に面倒な国だと"カートラお兄様は言い。

「いまから俺が話すはなしは、ここだけの話にしてくれ。俺たちは国王陛下の密書を届ける他に、ある命令を受けていた……その収集家が前日、とある人物と魔法大国スルートールで密会していたと情報を得た」

 お兄様の後にランドル様が続く。

「そう、そのとある人物というのがね。リルガルド国で罪を犯した、私たちがいまも探している犯罪人なんだ……」

「は、犯罪人だと」

 驚きの声を上げたナサと、ゴクリとみんなの喉が鳴る音を聞いた。わたしはこの話を聞いては"ダメ"だと思いながらも、カウンター席で話を聞いていた。

  "リーヤ"と、厨房からミリアに呼ばれる。

「話が長くなりそうだ……コーヒー、いれるよ」
「はい」

 みんなが深刻な話をするなか。
 わたしはミリアに呼ばれて、コーヒーをいれに厨房にはいった。
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