寵愛のいる旦那との結婚がようやく終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい
五十五
とっさにハンカチが入ったカゴを背中に隠した、けど、ナサにはバッチリ見えていたらしく。
「なあ、それって、まえ訓練場で言っていたハンカチか?」
興味津々に聞いてくる。
わたしはカゴを背中に隠したまま"そうだ"と頷いた。
「まじか、オレのハンカチはどんな柄だ? 見せて、リーヤ、見せてくれよ」
嬉しそうにナサはハシャギ、尻尾を大きく揺らす。いまは声に出して言わないけど……ナサのハンカチの柄はラベンダーとトラさんだよっと、心の中で呟いた。
「ダメ、まだ途中で……みんなのもあるから」
「そっか。シッシシ、楽しみに待ってるよ」
(ナサ、嬉しそう……もう、ここまでバレたのなら)
「あのね、クッキーも一緒に渡したいのだけと……みんなは、どんなクッキーが好きかな?」
「クッキー? うーん、オレはアーモンドクッキーが一番好きだな」
「え、ナサ、アーモンドクッキー好きなの?」
「ん? リーヤも好きか」
「うん、アーモンドパウダーをたっぷり使用した生地に、ローストしたアーモンドを混ぜ込んだ、香ばしいクッキーが好きだわ」
ナサはパンを食べた後なのに、ゴクッと喉を鳴らす。
「それ、美味そうだな」
「じゃ、今度のダンスの練習後にクッキー焼いておくから、一緒に食べよう……あ、そのクッキーは練習だから、その味は期待しないでね」
「シッシシ、わかった。さてと、ミリア亭に行くか」
「う、うん」
エプロンを持って、先の出ていくナサの後を追いかけた。
+
あれから何度か注文を受けたお弁当をリモーネ君に渡した。とんかつお弁当だったり、カツサンド、ミリアさんに習った生姜焼き、エビフライ、たくさんのメニューを考えて、付け合わせは野菜中心にしている。
ナサとのダンス練習も、、上手くいっているはず……たまに失敗して、ガッツリ足を踏んでしまい、ナサが大笑いする場面もあるけど。
みんなに渡すクッキーだって上手く焼けるようになって、渡すハンカチの刺繍も完成に近付いてきた。
この日、わたしはミリア亭で首を傾げていた。
(おかしいな……)
なぜか、今日のミリア亭のお客さんは、珍しく気まぐれ定食を頼む人が多い。閉店間際に来るカワさんとカヤ君、たまにミカさんといった、いつものメンバーなのに、今日はすでに六食も出ている。
どうして? と、作っている本人が困惑していた。そこにミリアさんが隣に来て、コソッと耳打ちする。
「リーヤ、今日の客層がいつもと違う気がしない?」
「え、ミリアさんもそう思います」
コクリと頷く。
いつもなら北区に住む亜人のお客さんが多いミリア亭。それなのに今日に至っては普通のお客さんが数人混じり、奥の六人掛けに座る四人組のお客さんに至っては、わたしをジロジロ見てくる。
もしかして、後一ヶ月でガレーン国の国王祭だから、お父様、お兄様、弟君の知り合いの方? にしては少し違うような気がする。
(三日前に両親とお兄様からの手紙が、ランドル様から届いたけど、そのような事は書いてなかった)
みるからに北区に住む、わたし達とは身なりの違うお客さんは、貴族にしてはガタイがいい。そして、一番奥のテーブル席の人達は、ローブを頭からすっぽり被っている。
その人たちが"気まぐれ"を頼んでくれて、いま気まぐれステーキ丼を黙々食べている。いつもだと頼んでくれたお客さんに、味の感想を聞くのだけど、なんだか聞きに行けない雰囲気。
(……近付くなオーラが出ている気がする)
「リーヤ、お肉と野菜足りてる? お弁当の準備は終わった?」
「はい、リモーネ君に渡すお弁当と、ワカさん達の気まぐれの分は準備できました」
今日、準備していた甘辛タレをかけたステーキ丼、付け合わせはマッシュポテトと、かぼちゃとアスパラの焼き野菜の、五食分の気まぐれは全部出てしまい。足らない一食分とワカさん達の分をミリアさんに都合してもらった。
「そうかい、足りなかったら言うんだよ」
「はい」
(ワカさん達とリモーネ君が来るのはあと、十五分後かな?)
手が空いたので流し台て洗い物をしていた。コンコンと、いつもより早い時間に裏の扉を叩く音がした。
「いらっしゃい。今日はいつもより来るの早いね、お弁当できてるよ?」
「リイーヤ、あ、ありがとう……ハァ、ハァ……」
そこには息を切らして、汗だくのリモーネ君がいた。
「なあ、それって、まえ訓練場で言っていたハンカチか?」
興味津々に聞いてくる。
わたしはカゴを背中に隠したまま"そうだ"と頷いた。
「まじか、オレのハンカチはどんな柄だ? 見せて、リーヤ、見せてくれよ」
嬉しそうにナサはハシャギ、尻尾を大きく揺らす。いまは声に出して言わないけど……ナサのハンカチの柄はラベンダーとトラさんだよっと、心の中で呟いた。
「ダメ、まだ途中で……みんなのもあるから」
「そっか。シッシシ、楽しみに待ってるよ」
(ナサ、嬉しそう……もう、ここまでバレたのなら)
「あのね、クッキーも一緒に渡したいのだけと……みんなは、どんなクッキーが好きかな?」
「クッキー? うーん、オレはアーモンドクッキーが一番好きだな」
「え、ナサ、アーモンドクッキー好きなの?」
「ん? リーヤも好きか」
「うん、アーモンドパウダーをたっぷり使用した生地に、ローストしたアーモンドを混ぜ込んだ、香ばしいクッキーが好きだわ」
ナサはパンを食べた後なのに、ゴクッと喉を鳴らす。
「それ、美味そうだな」
「じゃ、今度のダンスの練習後にクッキー焼いておくから、一緒に食べよう……あ、そのクッキーは練習だから、その味は期待しないでね」
「シッシシ、わかった。さてと、ミリア亭に行くか」
「う、うん」
エプロンを持って、先の出ていくナサの後を追いかけた。
+
あれから何度か注文を受けたお弁当をリモーネ君に渡した。とんかつお弁当だったり、カツサンド、ミリアさんに習った生姜焼き、エビフライ、たくさんのメニューを考えて、付け合わせは野菜中心にしている。
ナサとのダンス練習も、、上手くいっているはず……たまに失敗して、ガッツリ足を踏んでしまい、ナサが大笑いする場面もあるけど。
みんなに渡すクッキーだって上手く焼けるようになって、渡すハンカチの刺繍も完成に近付いてきた。
この日、わたしはミリア亭で首を傾げていた。
(おかしいな……)
なぜか、今日のミリア亭のお客さんは、珍しく気まぐれ定食を頼む人が多い。閉店間際に来るカワさんとカヤ君、たまにミカさんといった、いつものメンバーなのに、今日はすでに六食も出ている。
どうして? と、作っている本人が困惑していた。そこにミリアさんが隣に来て、コソッと耳打ちする。
「リーヤ、今日の客層がいつもと違う気がしない?」
「え、ミリアさんもそう思います」
コクリと頷く。
いつもなら北区に住む亜人のお客さんが多いミリア亭。それなのに今日に至っては普通のお客さんが数人混じり、奥の六人掛けに座る四人組のお客さんに至っては、わたしをジロジロ見てくる。
もしかして、後一ヶ月でガレーン国の国王祭だから、お父様、お兄様、弟君の知り合いの方? にしては少し違うような気がする。
(三日前に両親とお兄様からの手紙が、ランドル様から届いたけど、そのような事は書いてなかった)
みるからに北区に住む、わたし達とは身なりの違うお客さんは、貴族にしてはガタイがいい。そして、一番奥のテーブル席の人達は、ローブを頭からすっぽり被っている。
その人たちが"気まぐれ"を頼んでくれて、いま気まぐれステーキ丼を黙々食べている。いつもだと頼んでくれたお客さんに、味の感想を聞くのだけど、なんだか聞きに行けない雰囲気。
(……近付くなオーラが出ている気がする)
「リーヤ、お肉と野菜足りてる? お弁当の準備は終わった?」
「はい、リモーネ君に渡すお弁当と、ワカさん達の気まぐれの分は準備できました」
今日、準備していた甘辛タレをかけたステーキ丼、付け合わせはマッシュポテトと、かぼちゃとアスパラの焼き野菜の、五食分の気まぐれは全部出てしまい。足らない一食分とワカさん達の分をミリアさんに都合してもらった。
「そうかい、足りなかったら言うんだよ」
「はい」
(ワカさん達とリモーネ君が来るのはあと、十五分後かな?)
手が空いたので流し台て洗い物をしていた。コンコンと、いつもより早い時間に裏の扉を叩く音がした。
「いらっしゃい。今日はいつもより来るの早いね、お弁当できてるよ?」
「リイーヤ、あ、ありがとう……ハァ、ハァ……」
そこには息を切らして、汗だくのリモーネ君がいた。