寵愛のいる旦那との結婚がようやく終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい
五十九
目の前のナサはやっぱり怒ったような、拗ねたような顔をして、シャツでゴシゴシ手を拭いた。
「もう、拭くのいいんじゃない?」
「まだ、だめだ」
「もういいって」
『いい』『まだ』と言い合いをしていた。
カランコロンと、その途中にみんなが入ってきて、手と手で押し合いをしている所を、バッチリ見られる。
「「なっ!」」
「あら、仲良いわね。いま、みんなに昼食の準備するから待っていてね」
「おう、ミリアよろしく。……ふーん、ナサとリーヤはダンス練習を始めたから、さらに仲が良くなったな」
「本当ですね、羨ましい」
茶化すアサトとロカ、その後ろからはソワソワ、キョロキョロ中を確認する二人。
「ねえ、あいつら帰った?」
「うん、かえった?」
カヤとリヤは皇太子一行が、帰ったのか聞いた。
そんな二人にナサは
「カヤ、リヤ、アイツらは帰ったよ。それに亜人隊のお前らを捕まえに、騎士なんて二度とこねぇーよ。来てもオレが追い払ってやる!」
「「うん、ありがとう。ナサ!!」」
「俺にも頼れよ」
「私にもです、カヤとリヤは立派な亜人隊の仲間ですから」
と、ナサ、アサトとロカが言うと、
二人はホッとした様子で、いつものテーブルに座った。
(どうしてかわからないけど、亜人隊の中で一番、騎士が嫌いというより……二人は怖がっているようにみえる)
いつもナサ達が大丈夫だと、二人を安心させている。
+
落ち着きを取り戻したミリア亭。
みんなはクンクン鼻を鳴らす、わたしのステーキ丼の甘辛いタレの匂いが気になるらしく、食べたいと言うのだけど……。
準備した気まぐれは全部、出てしまったあと。
「ごめんね、今日は残っていないの」
みんなが残念がるのを見たミリアさんは、ドンと分厚いお肉の塊をカウンターの上に乗せた。脂のノリがよいお肉は極上のステーキ丼になりそう。
「どうだい、いいお肉だろう? リーヤ、このお肉を使うといいよ」
「いいんですか、ありがとうございます」
甘辛いタレを作り薄切りにしたお肉に絡めて焼いて、丼に盛ったご飯の上にタップリ乗せた。
(いい匂い、これ絶対に美味しいわ)
みんなにミリアさんのサッパリステーキと、甘辛いステーキ丼を運んだ。カウンター席のナサは分厚いステーキもあるのに、ステーキ丼が気にいったのかわたしのを狙う。
「食べてもいい?」
「わたしのだから、だめ」
「シッシシ。このステーキ丼スゲェうまい、オレの好きな味付けだ」
「ほんと、美味い!」
「いい味付けです」
「「リーヤ、美味しいよ!」」
さっきワカさんが言っていた通り、わたしの腕前が上がったのか、みんなにステーキ丼を気に入ってもらえた。
+
昼食が終わり、コーヒーを飲みながらアサトたちは、皇太子の話を始めた。
「もうすぐ、ご自分の婚約者決めの舞踏会があると言うのに。皇太子は国王祭の指揮をとる騎士総団長、第一部隊長を引き連れてくるなんて困りますね」
「だよな、皇太子の婚約者になりたい令嬢達が、各国から舞踏会に集まるというのに、自分の気持ちだけで動くなよ」
「それに関しては仕方ないかもしれません……学園の頃、婚約者が魔物に襲われて大怪我されて以来、弱い令嬢との政略結婚は望まない言い出した、と聞きます。しかし、皇太子のお歳が二十七、八ですので周りは焦りはじめましたね」
だから、ワーウルフと戦った女性を探したのか。
イヤイヤ、わたしの場合はたまたまだ、皇太子が強い女性を求めるのなら、騎士団所属の女性を選んだ方がいい。
「ケッ、あんな奴のことなんて、どうでもいい」
ナサが悪態をつくと、それに、
「そうだね。リーヤと仲が良い、番のナサは困るものね」
と、ミリアは意味ありげに、ナサを見る。
「ミリア、さっきのはアイツが触れた手を拭いていただけで……オレは、まだリーヤに告白していないから、まだ番じゃない! ……あ、」
ナサの頬がボッと赤くなった。
「もう、拭くのいいんじゃない?」
「まだ、だめだ」
「もういいって」
『いい』『まだ』と言い合いをしていた。
カランコロンと、その途中にみんなが入ってきて、手と手で押し合いをしている所を、バッチリ見られる。
「「なっ!」」
「あら、仲良いわね。いま、みんなに昼食の準備するから待っていてね」
「おう、ミリアよろしく。……ふーん、ナサとリーヤはダンス練習を始めたから、さらに仲が良くなったな」
「本当ですね、羨ましい」
茶化すアサトとロカ、その後ろからはソワソワ、キョロキョロ中を確認する二人。
「ねえ、あいつら帰った?」
「うん、かえった?」
カヤとリヤは皇太子一行が、帰ったのか聞いた。
そんな二人にナサは
「カヤ、リヤ、アイツらは帰ったよ。それに亜人隊のお前らを捕まえに、騎士なんて二度とこねぇーよ。来てもオレが追い払ってやる!」
「「うん、ありがとう。ナサ!!」」
「俺にも頼れよ」
「私にもです、カヤとリヤは立派な亜人隊の仲間ですから」
と、ナサ、アサトとロカが言うと、
二人はホッとした様子で、いつものテーブルに座った。
(どうしてかわからないけど、亜人隊の中で一番、騎士が嫌いというより……二人は怖がっているようにみえる)
いつもナサ達が大丈夫だと、二人を安心させている。
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落ち着きを取り戻したミリア亭。
みんなはクンクン鼻を鳴らす、わたしのステーキ丼の甘辛いタレの匂いが気になるらしく、食べたいと言うのだけど……。
準備した気まぐれは全部、出てしまったあと。
「ごめんね、今日は残っていないの」
みんなが残念がるのを見たミリアさんは、ドンと分厚いお肉の塊をカウンターの上に乗せた。脂のノリがよいお肉は極上のステーキ丼になりそう。
「どうだい、いいお肉だろう? リーヤ、このお肉を使うといいよ」
「いいんですか、ありがとうございます」
甘辛いタレを作り薄切りにしたお肉に絡めて焼いて、丼に盛ったご飯の上にタップリ乗せた。
(いい匂い、これ絶対に美味しいわ)
みんなにミリアさんのサッパリステーキと、甘辛いステーキ丼を運んだ。カウンター席のナサは分厚いステーキもあるのに、ステーキ丼が気にいったのかわたしのを狙う。
「食べてもいい?」
「わたしのだから、だめ」
「シッシシ。このステーキ丼スゲェうまい、オレの好きな味付けだ」
「ほんと、美味い!」
「いい味付けです」
「「リーヤ、美味しいよ!」」
さっきワカさんが言っていた通り、わたしの腕前が上がったのか、みんなにステーキ丼を気に入ってもらえた。
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昼食が終わり、コーヒーを飲みながらアサトたちは、皇太子の話を始めた。
「もうすぐ、ご自分の婚約者決めの舞踏会があると言うのに。皇太子は国王祭の指揮をとる騎士総団長、第一部隊長を引き連れてくるなんて困りますね」
「だよな、皇太子の婚約者になりたい令嬢達が、各国から舞踏会に集まるというのに、自分の気持ちだけで動くなよ」
「それに関しては仕方ないかもしれません……学園の頃、婚約者が魔物に襲われて大怪我されて以来、弱い令嬢との政略結婚は望まない言い出した、と聞きます。しかし、皇太子のお歳が二十七、八ですので周りは焦りはじめましたね」
だから、ワーウルフと戦った女性を探したのか。
イヤイヤ、わたしの場合はたまたまだ、皇太子が強い女性を求めるのなら、騎士団所属の女性を選んだ方がいい。
「ケッ、あんな奴のことなんて、どうでもいい」
ナサが悪態をつくと、それに、
「そうだね。リーヤと仲が良い、番のナサは困るものね」
と、ミリアは意味ありげに、ナサを見る。
「ミリア、さっきのはアイツが触れた手を拭いていただけで……オレは、まだリーヤに告白していないから、まだ番じゃない! ……あ、」
ナサの頬がボッと赤くなった。