寵愛のいる旦那との結婚がようやく終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい
六十五
 北門に着くと亜人隊は熊系大型モンスター、オオカミ型小型モンスター数体と戦っていた。ナサは盾でみんなを守り、アサトがオオカミを斧で斬りかかる。ロカは魔法でサポートしながら戦っていた。

(あれ?)

 リヤとカヤ、二人の姿が見えない。二人を見回して探すと、北門から離れた瓦礫の上に倒れている姿が見えた。

「ナサ、みんな!」

 声をかけるとナサは驚き、盾を構えたまま振り向く。

「はぁ、リーヤ? なぜ、ここに来やがった!」

「門が壊れる音を聞いて我慢できなかったの、ミカさんも助っ人に来ているわ!」

 チッと盾を構える、ナサの舌打ちが聞こえた。
 大変な時に来たのだから、悪態を吐かれてもいい。


「くそっ、リーヤとミカはオレの守りの陣に入れ!」

「はい!」

「ありがとう、ナサ、アサト、ロカ。僕はココに『癒しの木』をここに生やすね」


「「それは助かる!」」


 みんなにお礼を言われたミカは『任せて』と、杖を構えて詠唱に入ると、彼の周りに緑の紋様が足元に現れた。わたしもナサの守りの陣に入って、ナサに近付き【プロテクト】を重ねて掛けて、斧を振るアサトにもかける。

「ありがとう、リーヤ」
「カヤ君とリヤ君は何処にいるの?」

 ナサに聞くと、苦笑いを浮かべた。

「二人はさっき、熊モンスターの尻尾攻撃に吹っ飛ばされて、失神中だな」

「分かった、二人にヒールを掛けてくる」

「リーヤ、そばには小型モンスターもいる、行くのなら周りを気にしながらだ! カヤとリヤを頼んだ」

「分かった!」

 とナサに頷いた。

 ナサの陣から離れて、瓦礫の上の二人に近付きヒールを掛けた。彼らの体を触れてわたしのヒールでは治せない、骨折など大きな怪我がないか確認した。

(よかった、大きな怪我はなさそう)

「ナサ、アサトさん、ロカさん!! カヤ君とリヤ君は気絶しているだけで、大きな怪我はしていないわ!」

 みんなに聞こえるように叫んだ。

「そうか、よかった! 来やがれ熊野郎、オレがお前の攻撃全て受けて立つ」


「「ギャァオオオオォン!!!」」


 モンスターは雄叫びあげてナサに体当たりした。ナサの盾とモンスターのぶつかる音が響く。アサトとロカはナサに大型を任せて、オオカミ型の小型モンスターに浮き上がる召喚印をバリバリと割った。

 その中、一匹のオオカミがわたしに飛びかかる。

「リーヤ!」
「大丈夫、ナサ!! 余所を見しないで!」

 持ってきた木刀を振り抜き、オオカミ型の小型モンスターの体に当てた。しなる木刀と攻撃が当たったことにより、わたしとの距離を取る小型モンスター。

 ワーウルフの時よりは味方は多い。

 よし! と気合を入れてモンスターに木刀を構えた。オオカミの爪攻撃に耐えている、そこにザッザッと誰かの足音と声が聞こえた。

「ナサ、助太刀に来たぞ。私は何をすればいいのか、誰か命令してくれ!」

 ナサを呼ぶ声が聞こえた。鬼人族のリキは長い刃のついた武器を持ち、パン屋の時に見た服とは違う装いで現れた。

「リキ、大型の熊はオレが抑える。その間に小型モンスターを消してくれ! 消し方はリーヤが知ってるから聞いてくれ!」

「わかった、リーヤさん教えてください」

「わかりました、モンスターの額に浮き上がる黒い魔法陣を粉々に砕いてください。……く、砕いた後に落ちる黒い骨には絶対に触らないで、呪われます!」


 小型モンスターと睨み合いながら、早口で焦ってリキに説明をした。

 リキはコクリと頷き。


「承知した。かかってきなさい、モンスターども!!」

 リキさんは腰を深く構え、向かってくるモンスターに刀を繰り出した。目に見えぬ早さで数匹の小型モンスターの魔法陣がバリッと割れた。

(えっ、リキさんの太刀筋が早くて見えないわ。もしかすると、お兄様の太刀筋よりも早いかも)

 リキの腕前に驚いていた。
 それに気付いた、ナサが叫ぶ。

「ちょっ、リーヤ、なにリキに見惚れてんだぁ!」

「え、見惚れてなんかないわ。リキさんの太刀筋はお兄様よりも、早いかもって思っていただけよ!」

「うっせぇー、見るならオレを見てろ!」

「ナサも戦闘中に何を言い出すの。……もう、ちゃんと、見てるから余所見しないで!」


「本当だな!」
「本当だって!」


 まだ続く言い合いに小型モンスターと、戦闘中のアサトは呆れた。

「おい、おい、いま大変な戦い中だぞ、痴話喧嘩は終わってからにしろ!」

 それに釣られたのかロカのリキまで。


「あーっ、羨ましい、悔しい、私ことを誰が見てください!」

「ロカ、お前までつられて言い出すなぁ!」


「フフ、ナサ、嫉妬はダメですよ」
「はぁ? リキ!」

「お前ら、いい加減にしろ!」

 モンスターの数が減り余裕が出てきたのか、みんなが好き勝手に言い出す。

 そこにアサトの激怒が飛んだ。
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