寵愛のいる旦那との結婚がようやく終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい
七十一
 時刻はお昼過ぎーー夜の警備のためにみんなはお昼寝をするなか、買い物カゴを持ったミリアは、

「リーヤ、材料が足らなくなったから買い物に出てくるね」

 洗い物中のわたしにそう言い、買い物に出ていった。



 その数分後。

 今日のお弁当はできないと連絡したリモーネが、昨夜の事を聞いたのだろう、慌てて鈴を戻したドアベルを鳴らしてミリア亭にやって来た。

「リイーヤ!」

「あ、リモーネ君お疲れさま。今日はお弁当を作れなくてごめんね」

 彼はいいと首を振る。

「弁当のことなんていい。昨夜、大型と小型のモンスターが出たんだろ? 昨夜、皇太子殿下が第一騎士団を連れて、北門に向かったと朝の朝礼で聞いた」

「そうなの昨夜、北門でお会いしたわ。それでね、北門に現れた狼のモンスター数体と大熊のモンスター、両方ともに強制召喚されたモンスターだったわ。最近になって北門に現れるモンスターが多いのだけど……リモーネ君は何か知っている?」

「俺たちの間もその話題で持ちきりだ。……ところで、リイーヤがモンスターの生態に詳しいのは、昨夜、北門に行ったからかな?」

「そうだけど……」

 やっぱりか、と眉をひそめた。

「リイーヤ……驚くと思うが。お前、皇太子殿下直属の調査隊に見張られているな」

「えっ、皇太子殿下の調査隊?」

 わたしの驚き声で、隣で寝ていたナサが目を覚まして耳を澄ませた。アサトとロカも目を覚まして外を確認していた。

「フウッ、朝より減っているが外に三人いるな」
「はい、いますね」

「昨夜、リーヤが家を出て北門に来たと調査隊から、皇太子殿下に伝わったのか……なんで普段なら来ない北門に、皇太子殿下が来たのか不思議だってんだよな」

 皇太子殿下の調査隊……

「やだ、知らないうちに見張られていたの? じゃー昨日の夜、家の外に調査隊がいて、わたしの独り言を聞かれってこと!」 

 ……それが、本当なら恥ずかしい。

「独り言? リーヤはどんな独り言を言ったんだ? 聞かれちゃまずいことか?」

「ナサはそこに食い付かないで、調査隊なんてほんと困る」

 昨日の夕飯の調理中――

『ナサに美味しいって言ってもらいたいなぁ』
『その為にもっと料理上手くならないと、フフ』
『ナサがわたしの料理に美味しいって、笑った顔が見たいわ』

 ーーを知らない人に聞かれていたんだ。

「あ、この事を王城にいる、カートラお兄様に伝えれば……んん」

 ナサはわたしの口を押さえて外を指さした、その方角に人影が見えた。どうやら、わたしたちの話を聞いているようだ、このまま王城に行けば捕まる。

 ナサがリモーネ君に"帰れ"と合図した。
 リモーネ君もナサの意見に賛成して頷く。

「リイーヤ、騎士団に帰るよ」
「うん、またね、リモーネ君」


 夕方ごろ――お兄様達が皇太子殿下と話を終えて、ミリア亭に夕方頃に戻ってきた。そのお兄様とランドル様に事情を話した。

 お兄様達も気付いていたようで。

「あの皇太子殿下……どれだけ、リイーヤを気に入ってんだ」

 ランドル様、ナサ、アサトさん、ロカさんはお兄様の意見に頷いた。
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