寵愛のいる旦那との結婚がようやく終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい
八十三
ミリア亭の掛け時計がなる、時刻は四時半。
アサト、ロカ、リヤ、カヤはリキとミカと合流して、今夜の警備の話をするため、騎士団の訓練場に向かった。
わたしは洗い物をすませてナサの隣に座った。
「ナサ、緊張してる?」
「シッシシ。緊張は、してるな……お袋のこともあるしな」
突撃訪問の後、帰ってきたナサは時間ができたら話すと言ってくれた、わたしはそれに頷いた。
今夜の舞踏会は六時から受け付けが始まる。
それまでわたしとナサはドレスの気付けのこともあるからと、ミリア亭にいさせてもらえることになった。
(五時前から着付けを始めて、ここを五時半に出ればいい。ナサはソワソワしているから、わたしに話してくれるみたい)
わたし達が出るまで店を開けると言ってくれた、ミリアさんにお礼を言う。
「ミリアさん、ありがとうございます」
「気にしなくていいよ、リーヤのドレスの着付けも手伝うからね」
と、カウンターにコーヒーをコトッと三つ置いた。
ナサのそれにも体をピクッと揺らした。
(わたしにどう話すか、頭の中でグルグル考えていたのかな?)
「ナサ、言いたくないことは言わずに、ゆっくり話して」
「ありがとう、リーヤ。……フウッ、よし、聞いてくれ」
ナサは頷き、カウンター席でわたしの瞳をまっすぐ見た。
「はい」
「リーヤ、オレの故郷ーー実り豊かな土地ユーシリン国はガレーン国に十年前、オレが十三歳の時に敗戦した。とうじ国王の親父は一人で国を国民を守った……」
「え、ナサのお父様が一人で!」
テーブル席で新聞を広げて、話を聞いていたミリアさんも驚いている。
「凄かった、親父は盾を持ち門の前に立ち『ここから先は行かせない!』と、向かってくるガレーン騎士を"守り覇気"で近寄らせなかった。三日三晩、ガレーン騎士と親父のにらみあいが続いたが、親父は四日目の夜に膝を突いた……ガレーン国王もいたらしくて王同士の話し合いの末、ガレーンはユーシリンの国民に手を出さないとの約束でユーシリン国は敗戦となった」
「……うん」
親父はそのあと、体を壊して、床にふせり一年後に天にのぼった。泣きそうな顔になるナサ、お父様が好きだったんだ。
スッと息を吸い。
「ガレーン国王はーー土地の実りの多い土地、ラベンダーなどの税をガレーンに収めるだけで、国民には手を出さずと王は親父との約束を守ってくれた。しかし、五年後、ガレーンの北門をモンスターが数体襲った。当時の北区の自警団と騎士団が応戦してなんとかモンスターを退けることができたが、たがいなる犠牲が多く出たと聞く」
北区の北の奥の地には廃止された施設が残ったり、冒険者、騎士などしかはいれない、洞窟、ダンジョンなどがあると聞いているわ。
どんな一流の冒険者でもモンスターを一体を倒せるかどうかわからない。だから、モンスター討伐には多くの人が参加する。
「そこでガレーン王は考え、戦力の高い亜人国ユーシリンから数人、戦力の高い騎士を支援してくれないか? と、そうすれば、戦争、税を取らないと持ちかけてきた……」
ーーそれにはただ一つ、それには条件があった王の息子を一人参加させよと。
「それって、ナサのお父様と同じ"守りの覇気"が使えるから?」
ナサはそうだと頷く。
「兄貴は頭も力もある次期王だし、弟はまだ十三歳で妹十二歳で女性……親父譲りの体と力しかないオレがいくと言い、とうじ冒険者をしていたアサトとロカが名乗り出てくれた。まあ、他にも、オレの悪友とか執事とか着いてきちゃったんだけどな」
「紹介してくれた、レンさん、ギギさん、ルフさん?」
「そうだ、まだ他にも北区にいるけどな……人がいるから、来るなって言ったんだけど。アイツらお前ばかり嫌な思いはさせねぇ、させません、させるかよってさ、シッシシ」
ナサにはいい仲間がいたのね。
「仲間も一番に嬉しいが。こんなオレにさらに一番ができた、リーヤだ。リーヤと会えてオレは心を鷲掴みされた、初めて出会っときに一目惚れをして、ワーウルフでオレの心はかき乱されて、美人て、綺麗で、可愛くって……笑った顔が可愛くって、怒っても可愛い、がんばりやで、好きで、大好きで、オレを好きだって言ってくれた……」
ナサに優しい瞳で見つめられて、
わたしも。
「嬉しい、わたしもだよ。初めは獣人だわ……可愛い、耳と尻尾だったわ。ワーウルフのときの盾を構えたナサは素敵で、怒ったナサは少し怖かったけど。どんどんナサを知っていくうちに好きになって、大好きになったの」
えへへっと照れるわたしに、ナサの手が伸びて頬を撫でられる。
ーーあ、キスされる。
テーブル席のミリアさんがガサッと、新聞に隠れる音がした。気付いたのかナサの耳も動き、二人で、笑っておでこをくっ付けた。
「ミリア、二人の世界に入った、すまん」
「いいって、新婚はこれじゃなくちゃねぇ」
三人で笑っていた。
時間も来たからとドレスに着替えようとなり、ミリアさんに手伝ってもらい着付けに入ろうとした。
ドゴッと何かが壊れる音と、悲鳴が聞こえた。
「「ガオオオォォォォーーーーンン!!!」」
そのあと、大きな獣の鳴き声が北区に響く。
「な、親父?」
ナサがその獣の声にボソッとつぶやき、瞳を大きくした。
アサト、ロカ、リヤ、カヤはリキとミカと合流して、今夜の警備の話をするため、騎士団の訓練場に向かった。
わたしは洗い物をすませてナサの隣に座った。
「ナサ、緊張してる?」
「シッシシ。緊張は、してるな……お袋のこともあるしな」
突撃訪問の後、帰ってきたナサは時間ができたら話すと言ってくれた、わたしはそれに頷いた。
今夜の舞踏会は六時から受け付けが始まる。
それまでわたしとナサはドレスの気付けのこともあるからと、ミリア亭にいさせてもらえることになった。
(五時前から着付けを始めて、ここを五時半に出ればいい。ナサはソワソワしているから、わたしに話してくれるみたい)
わたし達が出るまで店を開けると言ってくれた、ミリアさんにお礼を言う。
「ミリアさん、ありがとうございます」
「気にしなくていいよ、リーヤのドレスの着付けも手伝うからね」
と、カウンターにコーヒーをコトッと三つ置いた。
ナサのそれにも体をピクッと揺らした。
(わたしにどう話すか、頭の中でグルグル考えていたのかな?)
「ナサ、言いたくないことは言わずに、ゆっくり話して」
「ありがとう、リーヤ。……フウッ、よし、聞いてくれ」
ナサは頷き、カウンター席でわたしの瞳をまっすぐ見た。
「はい」
「リーヤ、オレの故郷ーー実り豊かな土地ユーシリン国はガレーン国に十年前、オレが十三歳の時に敗戦した。とうじ国王の親父は一人で国を国民を守った……」
「え、ナサのお父様が一人で!」
テーブル席で新聞を広げて、話を聞いていたミリアさんも驚いている。
「凄かった、親父は盾を持ち門の前に立ち『ここから先は行かせない!』と、向かってくるガレーン騎士を"守り覇気"で近寄らせなかった。三日三晩、ガレーン騎士と親父のにらみあいが続いたが、親父は四日目の夜に膝を突いた……ガレーン国王もいたらしくて王同士の話し合いの末、ガレーンはユーシリンの国民に手を出さないとの約束でユーシリン国は敗戦となった」
「……うん」
親父はそのあと、体を壊して、床にふせり一年後に天にのぼった。泣きそうな顔になるナサ、お父様が好きだったんだ。
スッと息を吸い。
「ガレーン国王はーー土地の実りの多い土地、ラベンダーなどの税をガレーンに収めるだけで、国民には手を出さずと王は親父との約束を守ってくれた。しかし、五年後、ガレーンの北門をモンスターが数体襲った。当時の北区の自警団と騎士団が応戦してなんとかモンスターを退けることができたが、たがいなる犠牲が多く出たと聞く」
北区の北の奥の地には廃止された施設が残ったり、冒険者、騎士などしかはいれない、洞窟、ダンジョンなどがあると聞いているわ。
どんな一流の冒険者でもモンスターを一体を倒せるかどうかわからない。だから、モンスター討伐には多くの人が参加する。
「そこでガレーン王は考え、戦力の高い亜人国ユーシリンから数人、戦力の高い騎士を支援してくれないか? と、そうすれば、戦争、税を取らないと持ちかけてきた……」
ーーそれにはただ一つ、それには条件があった王の息子を一人参加させよと。
「それって、ナサのお父様と同じ"守りの覇気"が使えるから?」
ナサはそうだと頷く。
「兄貴は頭も力もある次期王だし、弟はまだ十三歳で妹十二歳で女性……親父譲りの体と力しかないオレがいくと言い、とうじ冒険者をしていたアサトとロカが名乗り出てくれた。まあ、他にも、オレの悪友とか執事とか着いてきちゃったんだけどな」
「紹介してくれた、レンさん、ギギさん、ルフさん?」
「そうだ、まだ他にも北区にいるけどな……人がいるから、来るなって言ったんだけど。アイツらお前ばかり嫌な思いはさせねぇ、させません、させるかよってさ、シッシシ」
ナサにはいい仲間がいたのね。
「仲間も一番に嬉しいが。こんなオレにさらに一番ができた、リーヤだ。リーヤと会えてオレは心を鷲掴みされた、初めて出会っときに一目惚れをして、ワーウルフでオレの心はかき乱されて、美人て、綺麗で、可愛くって……笑った顔が可愛くって、怒っても可愛い、がんばりやで、好きで、大好きで、オレを好きだって言ってくれた……」
ナサに優しい瞳で見つめられて、
わたしも。
「嬉しい、わたしもだよ。初めは獣人だわ……可愛い、耳と尻尾だったわ。ワーウルフのときの盾を構えたナサは素敵で、怒ったナサは少し怖かったけど。どんどんナサを知っていくうちに好きになって、大好きになったの」
えへへっと照れるわたしに、ナサの手が伸びて頬を撫でられる。
ーーあ、キスされる。
テーブル席のミリアさんがガサッと、新聞に隠れる音がした。気付いたのかナサの耳も動き、二人で、笑っておでこをくっ付けた。
「ミリア、二人の世界に入った、すまん」
「いいって、新婚はこれじゃなくちゃねぇ」
三人で笑っていた。
時間も来たからとドレスに着替えようとなり、ミリアさんに手伝ってもらい着付けに入ろうとした。
ドゴッと何かが壊れる音と、悲鳴が聞こえた。
「「ガオオオォォォォーーーーンン!!!」」
そのあと、大きな獣の鳴き声が北区に響く。
「な、親父?」
ナサがその獣の声にボソッとつぶやき、瞳を大きくした。