寵愛のいる旦那との結婚がようやく終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい
八十五
「ナサ!」
ナサが門をくぐったあと北門の外で、大きなぶつあう音が聞こえた。これはナサがーー親父と呼んだトラと体当たりした音なのだろうか。
すざましい衝撃音だ。
"ガオオオォォォォォォォーーーン!!!"
「グッ、やっぱり親父はつぇなぁ! だが負けねぇ!」
獣の鳴き声とナサの声が聞こえた。
ナサに何かあったら逃げろと言われていたけど……心配で、重い盾を持ちながら門に近付いた。門について時につき荒れる風、目の絵で繰り広げられる獣の同士のぶつかり合い。
その横で、アサト達は固唾を飲んで見守っていた。
(アレが、ナサの……本気? 前の大熊モンスターの時とは比べ物にならない。両者とも、真っ赤な炎に包まれている、アレが覇気?)
ナサ……の体当たりがまったく効かず焦っている、それに引き換え、トラは余裕があるように見えた。
「クソッ、つえぇ」
(……ナサ)
そして、何度目かのぶつかり合いで、ニヤッと相手とトラが笑った。ナサは何かを感じて、そのトラから離れて距離をとる。
額に魔法陣をつけて、ナサを目を細めて見るそのトラは両手を広げ、胸を大きく張り叫んだ。
『ウオォォォ! ワシは嬉しい、力をつけたな息子よ!!!!』
そのトラは強制召喚されたのにも関わらず、言葉を話したのだ。
「「え?」」
と言う言葉しか出ない。
この場にいる誰もが呆気に囚われる。トラはケタケタ笑い、ドカッとその場にあぐらをかいた。
『ハッハハ、このワシがこんな"ちっぽけな召喚"に操られるわけがないだろうが!』
もう、目が点。
『でもな、少し気合を入れて叫んで門が壊れたのには少々驚いたがな……壊して、すまんな!』
ガハハッと豪快に笑うトラ。と、突然の代わりように警戒していたナサは困惑した顔で。
「おい、親父は正気なのか?」
『そうだ! と言ったら信じるか?』
「訳がわかんねぇ」
ナサはジッと、そのトラを息をつめてジックリ見つめた。そして……フウッと息を吐き『シッシシ、マジがよ』と眉をひそめてポタポタ涙をこぼした。
『泣くなよ、立派になったな……ナサ。この目で、大きく育った息子が見られるなんて、この呼び掛けに応えて、この地に来られたことに感謝する』
……強制召喚なのだけど、ナサもそう思ったらしくて。
「だが親父、それは強制召喚だ……額の魔法陣を壊せば、親父は呪い骨に変わるんだぞ! なんで呼び掛けに応じたんだ!」
ナサの言う通りだと、北門のそばでウンウン頷いた。
召喚の呼び掛けに、あのトラの方から答えたような言い方をしている。召喚術を己の力で跳ね返せるのなら、跳ね返して、応えなくてもよかたんじゃない。
(呪い骨になってしまったら…そのあと、どうなるかわからないのだし)
『そうだが、ワシは家族に会いたかった。一目でいい、愛する母さんに会いたかった』
と恥じらった。
ナサが門をくぐったあと北門の外で、大きなぶつあう音が聞こえた。これはナサがーー親父と呼んだトラと体当たりした音なのだろうか。
すざましい衝撃音だ。
"ガオオオォォォォォォォーーーン!!!"
「グッ、やっぱり親父はつぇなぁ! だが負けねぇ!」
獣の鳴き声とナサの声が聞こえた。
ナサに何かあったら逃げろと言われていたけど……心配で、重い盾を持ちながら門に近付いた。門について時につき荒れる風、目の絵で繰り広げられる獣の同士のぶつかり合い。
その横で、アサト達は固唾を飲んで見守っていた。
(アレが、ナサの……本気? 前の大熊モンスターの時とは比べ物にならない。両者とも、真っ赤な炎に包まれている、アレが覇気?)
ナサ……の体当たりがまったく効かず焦っている、それに引き換え、トラは余裕があるように見えた。
「クソッ、つえぇ」
(……ナサ)
そして、何度目かのぶつかり合いで、ニヤッと相手とトラが笑った。ナサは何かを感じて、そのトラから離れて距離をとる。
額に魔法陣をつけて、ナサを目を細めて見るそのトラは両手を広げ、胸を大きく張り叫んだ。
『ウオォォォ! ワシは嬉しい、力をつけたな息子よ!!!!』
そのトラは強制召喚されたのにも関わらず、言葉を話したのだ。
「「え?」」
と言う言葉しか出ない。
この場にいる誰もが呆気に囚われる。トラはケタケタ笑い、ドカッとその場にあぐらをかいた。
『ハッハハ、このワシがこんな"ちっぽけな召喚"に操られるわけがないだろうが!』
もう、目が点。
『でもな、少し気合を入れて叫んで門が壊れたのには少々驚いたがな……壊して、すまんな!』
ガハハッと豪快に笑うトラ。と、突然の代わりように警戒していたナサは困惑した顔で。
「おい、親父は正気なのか?」
『そうだ! と言ったら信じるか?』
「訳がわかんねぇ」
ナサはジッと、そのトラを息をつめてジックリ見つめた。そして……フウッと息を吐き『シッシシ、マジがよ』と眉をひそめてポタポタ涙をこぼした。
『泣くなよ、立派になったな……ナサ。この目で、大きく育った息子が見られるなんて、この呼び掛けに応えて、この地に来られたことに感謝する』
……強制召喚なのだけど、ナサもそう思ったらしくて。
「だが親父、それは強制召喚だ……額の魔法陣を壊せば、親父は呪い骨に変わるんだぞ! なんで呼び掛けに応じたんだ!」
ナサの言う通りだと、北門のそばでウンウン頷いた。
召喚の呼び掛けに、あのトラの方から答えたような言い方をしている。召喚術を己の力で跳ね返せるのなら、跳ね返して、応えなくてもよかたんじゃない。
(呪い骨になってしまったら…そのあと、どうなるかわからないのだし)
『そうだが、ワシは家族に会いたかった。一目でいい、愛する母さんに会いたかった』
と恥じらった。