今宵、幾億の星の下で

「玲さんって、モテますよね」

玲は面食らった表情で睦を見返す。


「なあに、急に」
「元カレさんの来店まえ、お客さまにランチ誘われてましたよね?見ましたよ」


園芸店常連の男性客なのだが、玲を見つけるたびにランチに行こうだの、キレイな人だと云ってくる。
玲はため息をついた。


「ただのコミュニケーション。社交辞令。意味はないわ」


睦は意味ありげな笑みを浮かべる。


「玲さんが休みの日も、玲さんはいる?って訪ねてくる人いますし。あの男性は大地主さんだし。狙えると思います」


からかい混じりの睦の言葉だが、瞳は本気である。
玲は苦笑して答えた。


「高嶺の花にはなれてないってことよ。所詮、わたしはお手軽な花で、簡単な女だと思われているの」

「そんなこと云ってぇ。玲さんは美人なんですから、それを武器に……あ、いらっしゃいませ!」


来客対応に向かう姿を見送りながら、玲は思う。
自分は以外と選り好みしているのではないか、と。

「自分を本気にさせる相手がいないとか?そんな、まさか」

そんな上から目線で考えたことはなかったし、航大とも結婚も考えていた。
この男となら平凡で幸せな人生を歩めるだろう、そう思っていたが。

心から愛していたのか。

もちろん、イエスと答える。

答えるがどこか引っ掛かるのだ。

拓馬の姿が脳裏をよぎり、玲は頭を降った。


絶対に結ばれない。
彼も自分に本気なわけがない。
言葉ではいくらでも云えるのだ。


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