今宵、幾億の星の下で
「『フェレース・スコンベル』も無事だ。爆風で吹き飛ばされて、一部、付属品は作り替えたがね。宝石部分は無事だ」


ケースの中で新しいゴールドのチェーンを付けた宝石が、美しくキラリと光る。

まるで飼い主に再開できた猫のように、穏やかな輝きを見せた。


「公表はしてないが、こいつはおれと一緒に燃えたことになっている。やはり呪いだと、社内は騒然としているがな」

玲が安堵したように肩をなでおろす。

「良かった……でも、よく暴れなかったわね」
「よく見てほしい」
「……?」

宝石に目を凝らし、玲はハッとした。
二匹の猫が仲睦まじく寄り添っている。
一匹が歩き出せば、そちらに一瞬に動き、仲良く追いかけっこをしたりしている様子が見えた。

「……!」
「あの火事で、一緒の世界になれたのかもしれない。不思議なこともあるものだな。だからなのか、おとなしくしていてくれたよ」


拓馬はネックレスを取り出すと、玲の首にかけた。


「やはり、あなたの元にいるのが一番だ。よく似合う」


今度は小な指輪ケースを取り出すと、玲の前で開く。
『フェレース・スコンベル』のピアストップの宝石が、金の指輪にあしらわれていた。


「玲、結婚しよう」


拓馬が云った。


「二度目の告白だ。まあ、あの時と違うのは……死んでる間に市毛は社長に、おれは形だけの会長になった、ということかな」


片目を瞑ってみせた。
玲は涙を浮かべ笑顔を見せる。


「一緒に暮らそう。誰も、おれたちを知らない土地で」


玲は涙を浮かべ流れ落ちたことを隠し、返事の代わりに拓馬の胸に飛び込んだ。

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