生きづらさ

3人の家族と1匹の猫③

夫婦が僕に優しくしてくれる理由を知ったのはそれからだった。

2人には息子がいるが、ある日突然家を出て行ったそうだ。

思い当たる理由は特にないとのことだ。

僕も理由を想像することはできなかった。

今朝アナウンサーの彼女が僕に声をかけてきたのは、弟に僕が似ているからだったそうだ。

4人で楽しく食事をした。

本当に優しい家族だ。

3人の家族と1匹の猫。

どこにいてもおかしくない家族構成だが、3人と猫のことは好きだった。

旦那さんは酔いがまわったのか、時折話が止まることがあった。

それでも奥さんや娘は旦那さんの話に耳を傾けていた。

僕も話を聞き続けた。

後日僕は3人とミーにお礼のプレゼントを郵送した。

帰りに娘が僕をホテルまで送ってくれると車を出してくれた。

ごちそうさまでした、料理は美味しかったし、まさか歓迎されるとは思わなかったのですごく嬉しかったと伝えると、夫婦はいつでも来てねと見送ってくれた。

彼女の車に乗り込みホテルの場所を伝えた。

彼女はよかったら夜景でも見に行かないかと聞いたので、夜景を見に行くことにした。

改めて北海道の広大な土地とイルミネーションに僕は言葉が出なかった。

彼女は僕にいろいろと教えてくれた。

あの建物があの公園がなど、彼女は詳しく教えてくれた。

彼女は優しかった。

しかし年頃の彼女がどうして僕なんかにそこまで親切にするのかはわからなかった。

考えても僕の想像にしか過ぎないので、考えるのをやめ素直に楽しんだ。

彼女は急に話を止め、遠くを見つめた。

僕も遠くを見つめ彼女の次の言葉を待っていた。

彼女は泣いていたのだ。

僕はあえて彼女の方を見ずに、東京での生活を話した。

彼女はうんと言って頷くだけで、それ以外は何も言わなかった。

僕は彼女に何と言えばいいのかわからなかった。

きっと彼女が求めているものは僕じゃなく弟のことだったのだろう。

彼女が好きなようにすればいい、そう思って僕は話を続けた。

僕が一通り話終わると、彼女はごめんなさいと言った。

何も知らなかったふりをし、ホテルまで送ってもらった。

去り際に彼女もまた来てねと言ってくれた。
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