豆腐
第二章 豆腐の可能性

留守番①

川の隅に目をやると網に入った豆腐が冷やされていた。

僕はふと、まもるとまなみのことを思い出した。

彼らは僕の家で留守番をしている。

何かお土産でも持って帰ろう。

辺りを見渡していた。

豆腐型の石がいいかな?

きっと2人ならすぐに庭へ持っていけと言うだろう。

綺麗な花がいいだろうか?山の山菜がいいだろうか?

「聞いてる?」

葉月が僕に向かって言った。

「お腹も空いたし、お昼ご飯も作ってくれてると思うから帰りましょう」

僕達は来た道を戻った。

家に戻ると甘い煮付けの香りがした。

おばあちゃんが金目鯛を使って料理してくれていた。

味付けももちろんのこと、新鮮な金目鯛の素材そのものも美味しかった。

人参と油揚げが入ったひじきの煮物も美味しかった。

昼食を食べ終わると近所のおじさんの車に乗って海まで連れて行ってくれた。

漁港では漁師が何やら賑やかに働いていた。

しばらく僕はそれを眺めたり、海の先を眺めていた。

葉月はおじさんと話をしていた。

家に戻る頃には夕方になっていた。

僕はおばあちゃんにお礼を言うと、僕の家族で食べてねといくつかの魚介をくれた。

帰り道の車中で葉月は夕陽に染まった自然を眺めていた。

僕はそんな彼女をそっとしておいた。

家に着くと母が出迎え、葉月の両親にお礼を言った。

葉月はお腹が空いていたのか、少し不機嫌だった。

僕の母が良かったら家で食べていかないかと言うと、葉月の両親も一緒に食べることになった。

葉月の家族が僕の家で一緒にご飯を食べるのは珍しくない。

父親同士も仲が良くきまってお酒を飲む。

部屋に戻るとまもるとまなみが大きく広げた地図の上でなにやら話をしていた。

ここはりんごの生産量で有名なんだ。

なるほど、彼らは今青森を旅行しているのか。

どうやら、まもるが今日僕がどこに行っていたのかをまなみに説明していたようだ。

そのために地図を広げていたらしい。

地図のあちらこちらに彼らが通った跡があった。

いったい彼らはいつから旅行をしていたのだろうか。

2人が僕の存在に気がつくと「おかえり。お土産は?」とそろって言った。

さすが兄妹だ。

似ているところももちろんあるのだ。

帰りのパーキングエリアで買った落花生を渡すと、それを手にとり旅行の続きをした。

葉月のおばあちゃんから魚介をもらったことを伝えると、2人で一階へと降りていった。

豆腐は淡泊な一面もある。
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