神殺しのクロノスタシスⅣ
「…あのですね、お二人共」

シュニィは、苦笑いしながら二人を諭すように言った。

「私のように白い髪と…この目の色をしている人間は、アルデン人と呼ばれている少数民族でして…。世間では…忌み嫌われている人種なんです」

お前、律儀に説明してやるなんて。

不当に危ない人呼ばわりされたんだから、逆ギレしても良いと思うぞ。

それに…お前は忌み嫌われてなんか…。

「そうなの?じゃあ、年取って白髪になった人は、皆嫌われなきゃいけないじゃん」

「え」

「目の色なんて、簡単に変えられるし。何で嫌われてるの?」

「…」

シュニィですら答えに窮する、素朴な質問。

言われてみれば…まぁ…そうだよな。

「世間で嫌われてるって言ってたけど、僕、そんなこと全然知らなかったよ?本当に嫌われてるの?」

「少なくとも、ジャマ王国では聞いたことないよね〜。それよりルーデュニア人にとっては、ジャマ王国出身で、元『アメノミコト』の暗殺者の方が、よっぽど嫌われるんじゃない?」

「そうだね。この人真面目そうだし。何で嫌われるのか、さっぱり分からない」

…。

…子供って。

無邪気で容赦がないが、でもこういうときは…。

…本当、お前達の言う通りだよ。

「あなた達…」

「そんな気にしなくて良いと思うよ」

「うん。人間ってアホだし、何ならカツラ被ってサングラスかけたら、絶対バレないよ」

「そ、それは遠慮しますが…でも…ありがとうございます」

シュニィは、微笑んでそう言った。

シュニィにとっては、最も優しい薬かもな。

「何でお礼言うの?」

「そう言いたい気分なんです」

「ふーん」

変わってるね、と言わんばかりに、無邪気な子供達。

「でも…それでも、今のルーデュニア聖王国では…魔導師に対する偏見の目は、広がる一方なんです」

…そうだよな。

だからこそ、俺達はこうして、皆で集まってる訳で。

「今はまだ、一部の過激な人間に留まっていますが…この流れを抑えられなければ、今後も広がっていくばかりでしょう」

「学院がもし爆破されてたら、余計国内各地にいる、魔導師排斥論者達が騒ぎ立ててただろうな」

これは大きな手柄だ、『サンクチュアリ』に倣え、ってな。

そして、それまで魔導師排斥論者でなかった一般人も、『サンクチュアリ』に触発される可能性もある。

生徒を守れなかった俺達も、槍玉に上げられるだろうな。

そう思うと、爆発を未然に防ぐことが出来て、心から良かったと思う。
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