神殺しのクロノスタシスⅣ
「それは…俺だって分かってるけど、でも、もう少し待ってくれ。シルナだって、心の準備ってものが…」

「…良いんだよ、羽久」

こうなるに至っても、私を庇おうとしてくれる羽久を、私が制した。

もう良い。

君の優しさは、それで充分だ。

「いつまでも、黙っていることは出来ない…。それは分かっていたから」

「シルナ…!…良いのか…?」

「うん、良いよ」

ジュリス君の言う通りだ。

私が意地を張って、そのせいで、消えた四人が永遠に戻ってこられない、なんてことになったら。

それこそ私は、自分を許せないだろうから。

だから…話さなければならない。

「…なら…話してもらおうか。イーニシュフェルトの里の賢者」

…そうだね。

あれは確かに、私がまだ、イーニシュフェルトの里の賢者だったときの話だ。

「ベリクリーデが、あれは神に触れる力だって言ってた。…それは、本当なのか?あの水晶玉は…」

「…あれはね、確かに…神に触れる力だ」

私は率直に、その事実を認めた。

ジュリス君は覚悟していたようだったけど。

羽久は息を呑んでいた。

まさか本当に、と思ったんだろうけど。

まさか本当に、そうなんだよ。

「それは…無闇の『死火』みたいな…?」

「神に対抗出来る力…という点では、似てるかもしれないね。でもあの水晶玉は、本質的に『死火』とは違うものだよ」

無闇君の持つ『死火』。あれは、神殺しの魔法を模したもの。

でも今回の、あの水晶玉は違う。

作られた時代も、目的も。

「あれは…別名、魔封じの石。あらゆる魔法を無効化する、ある意味魔導師にとっては、一番恐ろしい力なんだよ」
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