神殺しのクロノスタシスⅣ
それでも、私に「話さない」ことは許されない。

ここまで話しておいて…今更黙っていても仕方ない。

「…さっき、四人が何処に行ったか分からない、って言ったけど…」

「あぁ。それがどうかしたか?」

「何処に行ったかは分からないけど、恐らく彼らにとっては…かなり、辛い状況にあるんじゃないかと思う」

「…!」

羽久も、ジュリス君も、目を見開いた。

「それは…命が危ないってことか?」

命が…。

…そうだね。もしかしたら、下手をすれば危ないかもしれない。

「四人共、あの魔法陣によって転移させられたなら…飛ばされた異次元世界は、魔封じの石の効力を受けている可能性が高い」

「魔封じの石の…効力?」

そう。

「魔封じの石は、あらゆる魔法を無にする…。だから四人が飛ばされた世界では、魔法を使うことが制限されていると思うんだ」

「飛ばされた先の世界で、魔法が使えないってことか?」

「恐らくは…そうなってるだろうと思う」

「…」

羽久もジュリス君も、これには少なからず、ショックを受けているようだった。

…だから、気が進まなかった。

非魔導師にとっては、当たり前なのだろうけど…。

これまで当たり前のように使えていた魔法が、いきなり使えなくなったとなれば…。

きっと四人共、酷く困惑しているはずだ。

「居場所も分からない…。おまけに、魔封じの石の力のせいで、こちらから魔法を使って探すことも出来ない、ってことか…」

「畜生…。魔法が使えない『サンクチュアリ』の連中の、意趣返しか?魔法を使えない世界で、一生彷徨い続けてろって?」

羽久とジュリス君が、順番に言った。

本当に…。

…これは、酷い意趣返しだよ。

ジュリス君の言う通り、消えた四人は、もう一生魔法を使えないどころか。

飛ばされた異次元から、戻ってくることも出来ないかもしれないのだから。

そして。

悪い情報は、これだけではない。

「…もう一つ、悪い情報があるんだけど」

「もうたくさんだっての…。まだあるのか?」

「残念なことに…」

しかも、さっきの悪い情報よりも、更に悪い情報だ。

口にするのは、とてもではないが気が進まないけれど…。

「こうなったら、最後まで聞こうじゃないか。何なんだ?」

「あの、『サンクチュアリ』の活動拠点にあった、魔封じの石だけどね。あれ…一つだけじゃないと思う」

これは、推測だけどね。

「一つじゃない…?」

「私が知ってる魔封じの石は、もっと大きなものだった。あの場所にあった石は…かなり小さい」

もとの大きさの、十分の一くらいだろうか?

それくらい小さかった。

「もとの石を無理矢理割って、複数個に分けたんだと思う。だから『サンクチュアリ』は、もしかしたら、他にも…」

「…あの場所にあった水晶玉みたいなのを、他にも何個も所有してるかもしれないってことか…」

「…うん、そういうこと…」

だから。

これから、第二、第三の魔法陣が出来て…また魔導師の誰かが被害に遭っても、おかしくないのだ。

『サンクチュアリ』が、魔封じの石を持っている限り…。
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