神殺しのクロノスタシスⅣ
「それにしても、本当に十個も存在するのなら、破壊するのは大変そうですね」

壊すこと前提のイレース。

「いや、魔導師は魔封じの石を壊すことは出来ないから…」

「む。じゃあどうするんですか?」

「砕かれた欠片を、全部集めて…再び封印し直すのが望ましいんだけど…」

魔封じの石だから、俺達魔導師には手出しが出来ない。

だからこそ、イーニシュフェルトの里の賢者達も、破壊ではなく封印という手段を選んだんだろうし。

「その方法は?」

「それは…。…やっぱり、強引になるけど…。私達自身が自ら、魔法陣に入って転移して…魔封じの石で作られた世界の内側から、魔封じの石を探して…。ってことになるだろうね」

「つまり、誰かが…少なくともあと六人は、魔法陣に飛び込む必要があるってことですか?」

「そうなるね…。でも、この方法は危険だ。魔封じの石で作られた異次元世界には、何が待ち受けてるか分からないから…」

ましてや、俺達。

その世界では、魔法も使えないんだろう?

ただの一般人になる訳だ。

そんな状態で魔封じの石なんて、見つけられるのだろうか…?

見つけたとして、その石を確保出来るのか?

「異次元世界って、具体的にはどんな世界なのか…分かるのか?」

「多分、魔封じの石の所有者の意識が反映された世界…だと思うけど、実際のところは分からない。所有者が自由に設定出来る世界だから…」

…持ち主が自由に…。

つまり、戦争の真っ只中みたいな世界に送られ。

そこで魔法も使えないまま、竹槍持たされて戦わされる、とか。

そういう世界も有り得るってことか?

地獄だな…。

「いずれにしても、所有者の意に沿う世界になってるはずだよ」

で、その所有者は魔導師排斥論者なんだから…。当然、魔導師にとっては辛い世界になってるんだろうな。

魔法が使えないってだけで、結構辛いけど。

いや、しかし。

シルナの話によると、完全に一般人になる訳でもない…のか。

実際行ってみないことには、分からないが…。
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