神殺しのクロノスタシスⅣ
すると。

「ですよねぇ。完全に非魔導師になれるなら、僕もワンチャン死ねるかと思ったんですが…」

「ナジュ…」

…そうだな。

お前にとっては…その方が良いんだろうけど。

「ナジュ君の場合は、異次元世界に行っても、不死身なのは変わらないだろうね。君の場合『それ』は、魔法ではなくて、魔物と融合したことによって発現した…一種の体質だから」

「不死身体質ってことですか?便利なんだか、そうじゃないんだか…」

と、ナジュはそう言った後に。

「…とりあえず、それなら僕は死なないことが確定しているので、僕が異次元への旅に出ても良いですが」

早速、異次元世界出陣への立候補者が出た。

「僕も…皆さんの役に立てるなら、行きます」

天音も、異次元への旅に立候補。

「天音さんは無理しなくて良いんじゃないですか?不死身な訳でもないんですし」

「馬鹿言わないで。不死身かどうかは関係ない。君が行くなら、僕だって行く権利はあるはずだよ」

「…」

天音に強く反論され、ナジュはちょっと驚いているようだった。

天音の言う通りだ。

ナジュ、何度も言ってるが、お前はもっと自分の命を大事にしろ。

「何だか勝手に盛り上がってるようですが、私もいるということを忘れないで欲しいですね」

と、イレースが不満気に言った。

「そ、そんな。イレースちゃん。君は女の子なんだから…」

「あら。この男女平等社会に、聞き捨てならない台詞ですね」

ま、まぁそれはそうだが。

「ようは異次元世界に行って、魔封じの石とやらの所有者を見つけ、そいつをぶっ飛ばせば良いんでしょう?何も難しいことはない。単純な話です」

イレースが言うと、マジで一瞬で解決してくれそうで、めちゃくちゃ心強いな。

危ないから、そんな簡単に行かせられないけどさ。

そして。

「…言っとくが、お前が行くなら、俺も行くからな」

分かってると思うが、俺はシルナにそう言った。

そこがどんなところだろうが関係ない。

俺は、シルナと同じ危険を背負う。

しかし。

「羽久…皆も…。分かってるよ。でも…この方法は本当に危険だから、最終手段ってことにして…。他に方法を探ろうと、」

と、シルナが言いかけた。

そのときだった。

学院長室の扉が、コンコン、とノックされた。
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