神殺しのクロノスタシスⅣ
「君だって、学院には必要な教師でしょ」

天音が言った。

特にナジュは、実技の授業を主に引き受けてるからな。

無駄に、生徒からの人気も高いし。

「確かに、このイケメンカリスマ教師は、イーニシュフェルト魔導学院になくてはならない、模範的な教師ですが」

ちょっと何言ってるのか聞こえなかったわ。

模範的って、お前言葉の意味知ってる?

「しかし今回は、話が別ですよ」

「そうやって、また自分から危険に…」

「危険だからこそ、じゃないですか。今回異次元世界に行けば、必ず…魔封じの石…を巡って、荒事になりますよ。天音さん、荒事向いてないじゃないですか」

「う。それは…」

天音の得意魔法は、回復魔法がメイン。

サポート役にはうってつけだが、しかし戦闘向きかと聞かれれば、返事に困る。

こればかりは、向き不向きがある。  

するとナジュは、何かを閃いたように言った。

「あ、それとも、またトゥルーフォームの天音さんになります?格好良く二刀りゅ、」

「あああ!それは言っちゃ駄目だって!」

慌てて、ナジュの口を塞ぐ天音。

…?トゥルーフォーム…?

何のことだが、分からないが…。

「うぅ…。わ、分かったよ…。今回は…譲るよ…」

天音、とうとう折れる。

ナジュは一人、「作戦勝ち」みたいなドヤ顔してる。

殴って良いと思う。

「…それじゃ、異次元世界に向かう遠征メンバーは決まりましたね」

イレースが言った。

そうだな。

俺とシルナと、それからナジュの三人。

ついでに、勝手に行った令月とすぐりの二人。

先に消えた、吐月、キュレム、ルイーシュ、無闇の四人。

合わせて九人。

それぞれの世界に、一つずつの魔封じの石があるから、九人が無事に生還すれば。

魔法陣を作り出している、赤い水晶玉を合わせて、十個の魔封じの石の欠片を集めることが出来る。

シルナの推測によれば、魔封じの石の欠片は十個だから。

俺達が全員戻ってくれば、魔封じの石を全て回収出来る。

そして『サンクチュアリ』の連中をお縄にして、魔封じの石を再び封印するのだ。

「…必ず、生きてここに戻ってこよう」

シルナが、俺とナジュに向かって言った。

「当たり前だろ」

「僕はワンチャン死…んでも良いんですが、まぁ無理そうなんで、無事に帰ってきますよ」

おい。何だその締まらない決意表明は。

そこは、必ず生きて戻る、と宣言するところだろうが。

「済みません、僕、常日頃死に焦がれてまして…」

「うるせぇ」

分かってるか、お前。

これから行く異次元世界では、そのお得意の読心魔法も使えなくなるんだぞ。

ちょっとは、人の心をみだりに読むという悪癖を、治してから帰ってくるんだな。
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