神殺しのクロノスタシスⅣ
これは、陽の光だろうか?

暖かな熱気に、少しずつ意識が覚醒していった…そのとき。

誰かに、後頭部を思いっきり叩かれた。

その衝撃で、俺は奇しくも、はっきりと意識を取り戻したのだった。

目を覚ますと、そこには見知らぬ風景が広がっていた。

「…えっ…」

思わず、そんな声が漏れた。

学校、だった。

広い教室の奥に、大きな黒板。教室に並べられた机と椅子。

何処からどう見ても、学校の教室だ。

一瞬、俺はイーニシュフェルト魔導学院に戻ったのかと思った。

しかし、そこは俺の記憶にある、イーニシュフェルト魔導学院ではなかった。

教室の広さも、机や椅子などの備品も、教室を歩いている生徒が着ている制服も、イーニシュフェルトのそれとは違うから。

じゃあ、ここは一体…何処の学校なんだ?

いや、そもそも。

ここは何処だ?

俺は一体何をしていたんだった?

などと、まるで記憶喪失者のようなことを考えていると。

「おい、聞いてんのかよ」

背後から、苛立った声で呼びかけられた。

えっ。

今の…俺に…話しかけたんだよな?

慌てて振り向くと、そこには、制服をだらしなく着た男子生徒三人が、こちらを見下ろしていた。

…そういえばさっき、俺、後頭部ひっぱたかれなかったか?

もしかして、いや、もしかしなくても。

この人達が、俺の頭をひっぱたいたのか?

お陰で目は覚めたけど、あまり気持ちの良い目覚め方ではなかった。

「え、あの…」

彼らなら、何か知っているかもしれない。

そう思って尋ねようとしたら、彼らのうち一人が、俺の座っていた椅子を蹴り上げた。

びっくりした。

「何ボーッとしてんだテメェ。さっさと行ってこいよ」

「え?」

い、行ってこいって、何に?何処に?

そもそもここは何処なんだ?

俺は何をしていて、ここに来た?

「い、行くって…。ど、何処に、ですか?」

困惑しながらも、何とか尋ねる。

すると彼らは、白々しいみたいな顔をして舌打ちした。

そ、そんな怒られても困る。

「頭沸いてんのか?毎日行ってるだろうがよ。俺らの昼飯買ってこいっつってんだよ」

はい?

俺は、出前業者か何かなのか?

え?それともパシリ的な…。

すると、俺を見下ろしていたうちの一人が、おどけたように言った。

「あ、俺今日、肉まん食べたい気分だからさぁ。Mマートまで走ってこいよな」

やっぱりパシリなんだ…。

今時、こんな古典的なパシリって、実在するんだ…。

などと、妙なことに感心していると。

「…ボサッとしてないで、さっさと行けって言ってんだよ!」

再度、今度は脳天を拳骨で殴られ。

俺は慌てて席を立ち。

逃げるようにして、教室の外に出た。
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