神殺しのクロノスタシスⅣ
その日も放課後塾に直行して、夜遅くなって家に帰ると。

家の中は、さながらお祭り騒ぎの様相を呈していた。

リビングは、これは一体何事なのかというほどの熱気に満ちていた。

俺、なんか場違いでした?

ん?よく見たら。

はしゃいでる両親の間に、ちっこいガキがいる。

昨日は見なかったが、あれは俺の…って言うか、もとの人の…弟か?

その弟も得意げな、満面の笑みを浮かべている。

…えーっと。俺はどうしたら良いんだ?

どうしたら良いのか分からず、しばしボケーッと突っ立っていると。

頭ハッピー状態の父親が、ようやく俺の存在に気づいた。

「あぁ、お前帰ってきたのか。これを見てくれ、ほら!」

そう言って。

薄らハゲ親父は、一枚の紙切れを、まるで勲章のように見せてきた。

そこには、驚くべきことが書かれていた。

まず一番に、そこでドヤ顔してる弟君の名前が書いてあって。

上記の者、審査の結果魔導適性有りと判定する、という一文が記載されていた。

…何これ?

「この子には魔導適性があったんだ!あぁ、良かった!お前のときは魔導適性無しの通知が帰ってきて、落ち込んだもんだが…。この子は魔導適性があった!さすが、うちの息子だ!」

このハゲたおっさん、何言ってんの?

魔導適性の有無を判定した、この紙切れは何だ?

更に、母親までもが。

「この子はきっと、私達と同じ優秀な魔導師になってくれるわ。兄弟揃って魔導適性がなかったらどうしようかと思ってたけど。でも良かった!これで我が家は安泰ね。面目を潰さずに済むわ」

このババァも、何言ってんだよ?

そして。

「うん!僕、兄ちゃんの代わりに、立派な魔導師になる!」

このクソガキも何言ってんだ。

家族揃って、頭トチ狂ってやがる。

魔導師になるから、何だって?

魔導師になれないから、何だって?

そんで、そのアホみたいな通知書は何だよ。

この世界は、魔導適性があるかどうかいちいち検査して、合格発表みたいに送ってくるのか?

何だよそれ。

それじゃあまるで、魔導適性がある者は人として合格、魔導適性のない者は…。

…。

…劣等種、だとでも言うのか?
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