神殺しのクロノスタシスⅣ
その後、同僚が新たに二人、子供達を連れてきた。

この子達も、先程檻の中にいた子だ。

同じく恐怖に引き攣った、異様な眼差しをしていた。

そんな子供達は、まず全員、着ていたものを着替えさせられた。

懐に何か隠していないか、厳重に見張りながらの着替えだった。

男の子だろうが女の子だろうが、関係ない。

大人達が見ている前で、全員裸になり、着替えさせられた。

薄汚れたボロ着から、小綺麗な洋服に。

それは子供達の見栄えを、少しでも良くする為だった。

これから彼らは売られに行くのだから、商品は少しでも、綺麗に見えた方が良い。

当たり前のことなのだろうが、俺は吐き気を催した。

その後、子供達の足首を一人ずつ数珠繋ぎにして鎖を巻き、逃げられないようにした。

その姿は、まるで家畜の群れだった。

そして家畜となった子供達は、正しく家畜のように、檻付きの車に乗せられた。

檻は頑丈で、到底、叩いたくらいで壊せるものではなかった。

そんな檻の中に、子供達を押し込み。

外から、同じく頑丈な南京錠を嵌めた。

これで子供達は、決して外には出られない。

彼らの目は、最早恐怖を通り越して、絶望と諦めに達していた。

…忘れてはいけない。

彼らを鎖で繋ぎ、南京錠で閉じ込めたのは、紛れもなく俺のやったことなのだ。

無論、同僚と一緒に、会長…シルナもどきの指示の下に、ではあるが。

指示されたとはいえ、実行したのは俺だ。

だから、俺だって充分共犯だった。

これからこの子供達は、何処に連れて行かれるのだろう?

まるで、屠殺場に向かうかのようじゃないか。

実際子供達にとっては、屠殺場に向かうも同然なのだろう。

これから自分は家畜として捌かれ、売り払われるのだから…。

陰鬱な思いで、しかし逃げられるはずもなく。

俺と同僚は、シルナもどきに連れ添って、車に乗り込んだ。

何処に行くのかは分からないが、シルナもどきと同僚の口ぶりからして。

恐らく、これから取引相手のもとに向かうのだ。

そんなこと言ってたもんな。

今回の取引相手は、うちにとって上得意様のお客だって。

上得意様ってことは、しょっちゅう奴隷の買い付けに来ている、常連客ってことだろう?

そんなに度々奴隷を仕入れて、何に使ってるんだ?

知りたくもないが、定期的に奴隷の補充が必要な何かをしているのだろう。

…想像するだけで、気持ち悪くなる。

さっき俺が支度をさせた子供達も、これからそこに送られるのだ。

そして、そうするよう指示したのは、このシルナもどきなのだ。

そう思うと、余計に気分が沈むばかりだった。




…車で、二時間ほどかけて辿り着いたのは。

見渡す限り緑が続く、高い鉄の柵に囲われた耕作地だった。
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