神殺しのクロノスタシスⅣ
魔導師排斥論者とは何か、だったな。

「魔導師排斥論者ってのはな、魔導師を嫌って、魔法を使うのを禁じようとする人達のことだ」

俺は、分かりやすく二人に説明した。

まぁ要するに、魔法反対!魔導師反対!って意見を持つ人々のことだな。

「何で?」

きょとん、と仲良く首を傾げる二人。

いや、何でって言われてもな…。

子供の質問って、これだから困るよ。物凄く純粋に、しかも簡潔に、疑問をぶつけてくるんだから。

返答に困る。

すると。

「世の中、魔導適性に恵まれた者ばかりではないでしょう。魔導適性がない、つまり魔法が使えない者も、世の中には大勢いるんです。そういう人達にとって、魔導師は危険な力を使う、人類にあるまじき異端者なんですよ」

イレースが、そう説明した。

その説明で、二人共納得したらしく。

「なーんだ。それってつまり、魔法が使えない人達が、魔導師に嫉妬して、逆恨みしてるってことじゃん」

と、すぐり。

お前な…。身も蓋もない…。

これだから子供ってもう…。少しはオブラートに包めよ。

一方の令月は。

「でも、気持ちは何となく分かるな。僕だって、力魔法だけじゃなくて、『八千歳』みたいに色んな魔法が使えたら…って、嫉妬してた時期があるから」

…令月…。

「きっと、そういう人が魔導師排斥論者、になるんだね」

「馬鹿らし。『八千代』は魔導適性あるじゃん」

「でも、力魔法しか使えないよ。自分には出来ないのに、他の人が器用に魔法を使ってたら、やっぱり羨ましくなるよ」

お前が言うと、説得力が違うな、令月。

俺達は、努力次第で様々な魔法が使えるが。

魔法の使えない者にとっては、やはり俺達は危険な存在に見えるのだろう。

「魔導適性のみならず、世の中には、特殊な魔法を使う魔導師もいますからね。そのような魔法を目の当たりにすれば、魔導師を危険視するのも頷けます」

と、イレース。

確かにな。

「全くですよ。全ての魔導師が、僕のように健全な魔法だけを使う訳じゃありませんしね」

「お前が言うな」

読心魔法という、非常に特殊な魔法を。

平気で乱用し、人の心を読んではほくそ笑んでいる奴の、何処が健全だって?

お前がこの中で一番、魔導師排斥論者に嫌われる存在だろうよ。

まぁ、時魔法を使う俺も、人のことは言えんがな。
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