神殺しのクロノスタシスⅣ
「で、その魔導師排斥論者っていうのが、ごそごそ動き回ってるの?」

「学期の始めに、南にいたクラスメイトが帰ってくるの遅れたの、そのせいなんだ?」

元暗殺者組二人が、続けざまに尋ねた。

「そうだよ」

「ふーん」

ふーんってお前。

そんな、どうでも良さそうに。

「別にそんなの、好きに騒がせとけば良いじゃん?」

あろうことか、すぐりはそんなことまで言い出した。

「好きにって…お前な…」

「だって、それ騒いでるのって、魔法使えない一般人でしょ?」

それは…まぁ。

そうだけど…。

昔のクュルナみたいな…一部例外はいるが。

確かに、魔導師排斥論者のほぼ全てが、非魔導師の一般人だ。

「だったら放っとけば良いよ。どうせ、一般人が何したって、魔導師には敵わないんだからさ」

お前…身も蓋もないことを…。

「僕もそう思う。一般人が何人集まったって、魔導師なら一瞬で黙らせられるよ」

元暗殺者組の発想は、二人共一致しているらしく。

令月までもが、あっさりとそう言った。

いや…それは…まぁそうなんだけど…。

「でもな…そうやって魔導師が力で抑えつけようとすればするほど、また魔導師排斥論者のヘイトを買うことになって…」

「放っとけば良いじゃん」

駄目なんだって。

投げ槍になるな。

「何回抵抗しても、魔導師には勝てないんだって思い知れば、いずれ大人しくなるよ、きっと」

令月まで、けろっとして言いやがる。

こいつらは、もう駄目だ。

発想が過激過ぎる。育ちのせいだな。

「…と、ともかく」

と、シルナにしがみつかれまままの天音が言った。

「まだ、学院に被害がある訳ではないし…。これからどうなっていくかも分からないし…。聖魔騎士団も調べてくれてるんでしょう?」

「あぁ。何か分かったら連絡するって」

エリュティア達が言ってた。

「なら、僕達がここで心配していても、仕方ないよ」

「まぁ、今ちょっと頻発してるだけで、すぐ沈静化するかもしれませんしねぇ」

天音とナジュがそう言った。

確かに、そうだよな。

俺達がここで騒いでたって、魔導師排斥論者達が大人しくなってくれる訳でもなし。

幸い、まだ大きな火事になっている訳でもない。

火種のうちに、聖魔騎士団が上手いこと収めてくれるかもしれない。

楽観的に見えるかもしれないが、これまでだって、魔導師排斥運動が活発化したことは、何度もある。

これが初めてではないのだ。

魔導師排斥論者達には悪いが、この運動は、いずれ収束することだろう。

何せここは、ルーデュニア聖王国だからな。
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