神殺しのクロノスタシスⅣ
その日の、五時間目が始まった頃。

担当している授業がなかった俺は、職員室で書類仕事に勤しんでいた。

ちなみに、イレースとナジュは、それぞれ授業に行っており。

かつ、天音は養護教員として、保健室にいるので。

今職員室には、俺一人である。

え?シルナはどうしてるかって?

知らん。多分学院長室で、午後の昼寝を貪っていることだろう。

イレースに雷落とされてしまえ。

とか思っていたら、予想外のことが起きた。

「羽久〜っ!!羽久どうしよう!大変だよ、大変だよ!」

「うわっ、何だよ?」

いきなり、ガラリと職員室の扉が開き。

涙目になったシルナが、飛び込んできた。

そして、俺にしがみついて、ギャンギャン叫び出した。

「うわぁぁぁん!なんて酷いんだ!あんまりだ!あんまりだ〜っ!!」

お前の今の顔面以上に、酷いものがこの世にあるのか?

「うわぁぁぁぁん!羽久が私に失礼なことを考えてる気がする〜っ!!」

それが言えるんなら元気だろ。

で。

「何だよ。何があった?」

「エヴェリナちゃんが!エヴェリナちゃんが〜っ!」

誰?

多分、生徒の一人だと思うんだが。

俺はシルナと違って、生徒全員の顔と名前を把握していない。

上級生になってくると、自然と覚えるんだがな。一、ニ年生はまだ自信がない。

特に一年生は、まだ学院に来て半年足らずだし。

そして俺の担当する時魔法は、高度な魔法である為、上級生にならなければ講義は開かれない。

だから、余計に低学年の生徒と接する機会が少ないのだ。

「シャネオンから来てる、一年生の女の子だよぅ」

シルナは、涙目で教えてくれた。

やっぱり生徒だったか。それも一年生。

俺が覚えてない訳だ。

「その子がどうした?『学院長の後頭部、そろそろヤバくなってきてますね』とでも言われたか」

「違うよ!…え?ヤバ…え!?ヤバいの!?」

知るか。

「で?何があったんだ」

「うぅ…。それが、それが…うぅ〜」

あぁ、もう。

「分かった、分かった。ちょっと落ち着け。な?」

俺は、シルナの背中をポンポンと叩いて言った。

生徒のこととなると、すぐこれなんだから。

学院長の威厳も糞もないったら。

「羽久〜…」

「分かったから、落ち着いて話せ。何があった?エヴェリナって子がどうしたんだ」

「うぅ…。エヴェリナちゃんが…エヴェリナちゃんがね、ひっく…。た、退学するって…退学したいから、たっ、退学届を郵送してくれって…」

「は…!?」

シルナじゃないけど、これには俺も仰天した。

退学届を郵送してくれって、それは一体何事だ?
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