神殺しのクロノスタシスⅣ
そういう生徒も、稀にいる。
本当に稀だけどな。
エリュティアが良い例だ。
受験したものの、まさか合格するとは思わなくて。
障害を持った家族の介護要員だったエリュティアを、家から手放したくなかった家族がゴネて、入学辞退させようとした。
あのときは、エリュティア本人の強い意志とシルナの尽力があって、彼は無事にイーニシュフェルト魔導学院に入学したが。
今回、今度はエヴェリナという生徒が、似たような目に遭っているらしい。
こういう例は、滅多にあることではないが、本当に腹が立つ。
家族には家族の事情があるんだろうが、しかし本人が「学院に戻りたい」と言っているのに、その意志は尊重せず。
無理矢理家に留め、挙げ句一方的に退学させることを要求してくるとは。
生徒には、勉強する権利があるのだ。
その権利を侵すことは、親であろうと、誰であろうと出来ない。
「うぅ…。え、エヴェリナちゃんがね、い、いつまでたっても帰ってこないから…。連絡したら、退学届を寄越せって…」
と、シルナは泣き泣き言った。
「最初は、シャネオンの駅の件で、落ち着くまで自宅待機してるのかと思ったけど…。あんまり帰ってこないから…」
…成程。
南方都市シャネオンで起きた、駅の爆破事件。
あれのせいで、帰りが遅れているのかと思ったら。
いつまでたっても戻ってこないから、不思議に思って連絡してみたら。
「もう学院には帰らせないから、退学届寄越せ」と彼女の家族に言われ。
ここで大号泣してる訳だな?
…まぁ…分からなくもない…か?
「シルナ、落ち着け。親だったら、あの件で一際神経質になってもおかしくないだろ」
俺はそう言って、シルナを宥めた。
さぁ、今日学院に帰ろうと思って送り出そうとしたら。
今から乗ろうとしていた駅が大混雑で、帰れない。
仕方なく自宅待機していたら、後で聞けば、なんと駅で爆破事件が起きたと言うではないか。
一歩間違えていたら、列車に乗ったエヴェリナが、事件に巻き込まれていたかもしれないのだ。
そう思えば、親なら誰でも戦慄する。
ましてや、イーニシュフェルト魔導学院は全寮制で、親が傍にいて子供を守ってやれる訳ではないのだから。
余計、神経質になってもおかしくない。
一年生の生徒だから、なおさらな。
多分エヴェリナの家族も、かなり動揺しているのだろう。
最寄り駅であんな事件が起きれば、誰だって少なからず神経質になる。
自分達の見えないところで、娘に何かあったらと思えば、天下のイーニシュフェルトだろうが、信用ならないのは当然だ。
だったらいっそ、そんな遠い学校はやめさせ。
地元の学校で良いから、自分達の目の届く範囲に、娘を置いておきたい。
そう思う親がいても、おかしくない。
「そ、そうかな…?」
「そうだよ。とにかく、シャネオンの彼女の実家に行って、直接交渉しよう」
と、俺が具体案を提示すると。
シルナの顔に、ようやく生気が宿った。
「そ…そうだね。行ってみよう…。説得すれば、考えを変えてくれるかも…」
「あぁ。このくらいで諦めるなんて、らしくないぞ」
「うん…うん。そうだね!」
よし、元気出たな。
じゃあ、ちょっくら南方都市シャネオンまで、行ってくるとしよう。
本当に稀だけどな。
エリュティアが良い例だ。
受験したものの、まさか合格するとは思わなくて。
障害を持った家族の介護要員だったエリュティアを、家から手放したくなかった家族がゴネて、入学辞退させようとした。
あのときは、エリュティア本人の強い意志とシルナの尽力があって、彼は無事にイーニシュフェルト魔導学院に入学したが。
今回、今度はエヴェリナという生徒が、似たような目に遭っているらしい。
こういう例は、滅多にあることではないが、本当に腹が立つ。
家族には家族の事情があるんだろうが、しかし本人が「学院に戻りたい」と言っているのに、その意志は尊重せず。
無理矢理家に留め、挙げ句一方的に退学させることを要求してくるとは。
生徒には、勉強する権利があるのだ。
その権利を侵すことは、親であろうと、誰であろうと出来ない。
「うぅ…。え、エヴェリナちゃんがね、い、いつまでたっても帰ってこないから…。連絡したら、退学届を寄越せって…」
と、シルナは泣き泣き言った。
「最初は、シャネオンの駅の件で、落ち着くまで自宅待機してるのかと思ったけど…。あんまり帰ってこないから…」
…成程。
南方都市シャネオンで起きた、駅の爆破事件。
あれのせいで、帰りが遅れているのかと思ったら。
いつまでたっても戻ってこないから、不思議に思って連絡してみたら。
「もう学院には帰らせないから、退学届寄越せ」と彼女の家族に言われ。
ここで大号泣してる訳だな?
…まぁ…分からなくもない…か?
「シルナ、落ち着け。親だったら、あの件で一際神経質になってもおかしくないだろ」
俺はそう言って、シルナを宥めた。
さぁ、今日学院に帰ろうと思って送り出そうとしたら。
今から乗ろうとしていた駅が大混雑で、帰れない。
仕方なく自宅待機していたら、後で聞けば、なんと駅で爆破事件が起きたと言うではないか。
一歩間違えていたら、列車に乗ったエヴェリナが、事件に巻き込まれていたかもしれないのだ。
そう思えば、親なら誰でも戦慄する。
ましてや、イーニシュフェルト魔導学院は全寮制で、親が傍にいて子供を守ってやれる訳ではないのだから。
余計、神経質になってもおかしくない。
一年生の生徒だから、なおさらな。
多分エヴェリナの家族も、かなり動揺しているのだろう。
最寄り駅であんな事件が起きれば、誰だって少なからず神経質になる。
自分達の見えないところで、娘に何かあったらと思えば、天下のイーニシュフェルトだろうが、信用ならないのは当然だ。
だったらいっそ、そんな遠い学校はやめさせ。
地元の学校で良いから、自分達の目の届く範囲に、娘を置いておきたい。
そう思う親がいても、おかしくない。
「そ、そうかな…?」
「そうだよ。とにかく、シャネオンの彼女の実家に行って、直接交渉しよう」
と、俺が具体案を提示すると。
シルナの顔に、ようやく生気が宿った。
「そ…そうだね。行ってみよう…。説得すれば、考えを変えてくれるかも…」
「あぁ。このくらいで諦めるなんて、らしくないぞ」
「うん…うん。そうだね!」
よし、元気出たな。
じゃあ、ちょっくら南方都市シャネオンまで、行ってくるとしよう。