神殺しのクロノスタシスⅣ
…しばし、俺と彼は互いに睨み合った。

明らかに彼は狼狽していたが、しかし苦し紛れに言った。

「偉そうに説教したって…無駄だ」

「何が?」

「お前は、この世界から出られない。それも、変えられないお前の運命だ」

成程。確かにそうかもしれないな。

「だが、それなら俺は…その運命に足掻くだけだ」

お前と同じようにな。

「どう、やって…。魔法も使えない癖に…」

「…『死火』が、何故神殺しの魔法と間違えられたか、分かるか?」

「…は?」

分からないだろうな。

そもそもこの男は、俺が『死火』の契約者であることを知らないのだから。

そういう意味では、お前は復讐対象を間違えた。

他の魔導師なら、本当にここから出られないところだったろうな。

でも、『死火』なら。

この世のあらゆるものを灼き尽くし、神に対抗する力を持つこの魔導書なら。

「行くぞ、月読…。この仮初めの世界を、全て灼き尽くせ」

俺が魔力を込めると。

『ふふ…。珍しく、全力出してみよっか』

俺の中にいる魔導書の化身が、楽しげに笑う声が聞こえた。




…世界が、白い光に包まれた。
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