神殺しのクロノスタシスⅣ
意気込んで、エヴェリナの家に来たは良いものの。

ろくに話も出来ず、門前払い。

あんなに激昂されては、再びインターホンを鳴らす勇気もない。

と言うか、これ以上踏み入ろうとすれば、警察呼ばれかねない勢いだった。

こうなったら俺達は、すごすごと引き下がる他ない。

「…仕方ない、シルナ。日を改めて…」

と、俺が言いかけたとき。

シルナは、俺の方を向いてはいなかった。

シルナは上を…オーネラント家の二階を見上げていた。

釣られて、俺も上を見ると。

二階の窓から、カーテンを少しだけ開けて。

後ろめたそうな、申し訳無さそうな…そして泣きそうな顔をした少女が、こちらを覗いていた。

あれは…エヴェリナ本人?

俺が彼女の姿を見れたのは、ごく一瞬のことだった。

俺と目が合うなり、彼女はハッとして、カーテンを閉めた。

ほんの一瞬だったけど、でも、確かに見えた。

彼女は…。

「…学院に戻りたくないのは、エヴェリナちゃん本人の意志じゃないんだ」

シルナは、ポツリと呟いた。

…そうだな。

本当に学院に戻りたくないなら、あんな顔、するはずがない。

「だとしたら…私は諦めないよ、羽久」

「あぁ…。そうだと思ってた」

こういうときの、シルナの諦めの悪さは。

俺が、一番良く知ってるからな。
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