神殺しのクロノスタシスⅣ
「この馬鹿。誰が勝手に木を切ってる!しかも桜の木を!この罰当たりめ!」

「…木、切っちゃ駄目なの?」

「当たり前だろうが」

何でそこから確認するんだよ。アホか?アホなのか?アホだったな。

「でも木こりさんは、木を切ってるよ?」

「そうだな。木こりは木を切るのが仕事だが、お前は魔導師だからな。そしてここに植えてあるのは、敢えて植えてあるものなんだから、勝手に切っちゃ駄目なんだよ」

「そうだったんだ…」

いちいち言わなくても、それくらいは理解して欲しかったよ。

「もっと早く言ってくれたら良かったのに」

ごめんな。まさか俺も、お前がいきなり隊舎裏の木の伐採計画を建てているとは知らず。

「でも、桜の木は何で罰当たりなの?」

「そりゃお前…桜の木は縁起の良い木だからな。昔から、桜の枝を切ったり折ったりすると、バチが当たる、って言われてるんだよ」

まぁ、迷信なんだけどな。

「そうだったんだ…。じゃあ私、バチ当たるのかな…?」

それはお前の動機次第だろうな。

「何がやりたかったんだお前は」

「木を切りたかった」

「何で?」

「ジュリスが『積み木して遊んでろ』って言ってたから」

「…」

…うん。

…言ったけど。

…誰も、本物の木を切って積み上げて遊べ、とは言ってないからな?

何だ、そのダイナミック積み木は。

「それにジュリス、よく言ってるでしょ?『小さくまとまるのも良いが、何でも上を狙って挑戦してみる気概を持つべきだ』って」

うん、言ったなそんなこと。

律儀にそれを実践してみたのか。

お前のそういう、人の言うことに素直に従うところはお前の長所なんだけどな。

時にその長所は、致命的過ぎる欠点に繋がる。

「…とりあえず、こののこぎりは没収だ」

「えっ」

「えっじゃねぇ。お前はもういっそ、金輪際、上を目指さず小さくまとまっててくれ」

その方が、余程周囲と…。

そして、俺への被害が小さくて済むから。
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