神殺しのクロノスタシスⅣ
何で、こんなところに令月とすぐりがいるのか。
こいつらの夜間外出は、まぁいつものことだ。
そして、非常時での危機察知能力は、この二人以上に高い者はいない。
恐らく、深夜に侵入者の気配を感じ取り、その跡を追ってきたのだろう。
二人の目は、完全に暗殺者のそれだった。
敵。侵入者。学院に仇為す者。
そんな存在を、二人の元暗殺者は許さない。
二人共、見ず知らずのこの男を殺すことに、躊躇しないだろう。
でも。
「待て。令月、すぐり」
引き金を引くには、まだ早い。
「…何を?」
答える令月の声があまりにも冷たくて、ぞっとしてしまいそうになったが。
「生徒が人質に取られてる可能性がある。下手に手を出すな」
まずは、生徒の安全を確保しなければ。
すると。
「生徒などどうでも良い」
令月とすぐりに、命を握られた状態で。
平然とした顔で、そいつはそう答えた。
「俺の要求は一つだけだ。…賢者の石を返せ」
やはり。
生徒を人質にするつもりはないようだ。
あくまで、目的は賢者の石のみ。
なら、話は楽だな。
「さっきの質問を、もう一度するよ。君は何者なんだ?何故、賢者の石を狙う?」
「…」
シルナが尋ねるも、男は答えない。
そして、返事の代わりとばかりに。
懐に持っていたであろう、欠片となった賢者の石が光った。
「…っ!」
男の四肢を捕らえていた、すぐりの糸が消えてなくなった。
賢者の石の、魔封じ能力だ。
そういうことか。賢者の石の能力を使いこなすこの男には、通常の魔法は通用しない。
しかし。
「…僕のは魔法じゃないから、消えないよ」
令月の小太刀は、魔法によって作ったものではない。
そもそも令月は、力魔法のみしか使えない。
そして令月ならば、力魔法がなくても、小太刀の腕だけで、この男と充分に渡り合えることだろう。
更に、すぐりのサポートもある。
糸が通じないと見るや、すぐりは自前のクナイを両手に構えた。
間違いなく、あのクナイには毒が塗ってある。
魔法を封じたとしても、この二人の連携を相手にするのは、さぞや辛かろう。
しかし、それでも男は、まるで動じなかった。
「…ならば、俺ももう一度同じことを言う。…賢者の石を返せ」
毅然として、そう繰り返した。
こいつらの夜間外出は、まぁいつものことだ。
そして、非常時での危機察知能力は、この二人以上に高い者はいない。
恐らく、深夜に侵入者の気配を感じ取り、その跡を追ってきたのだろう。
二人の目は、完全に暗殺者のそれだった。
敵。侵入者。学院に仇為す者。
そんな存在を、二人の元暗殺者は許さない。
二人共、見ず知らずのこの男を殺すことに、躊躇しないだろう。
でも。
「待て。令月、すぐり」
引き金を引くには、まだ早い。
「…何を?」
答える令月の声があまりにも冷たくて、ぞっとしてしまいそうになったが。
「生徒が人質に取られてる可能性がある。下手に手を出すな」
まずは、生徒の安全を確保しなければ。
すると。
「生徒などどうでも良い」
令月とすぐりに、命を握られた状態で。
平然とした顔で、そいつはそう答えた。
「俺の要求は一つだけだ。…賢者の石を返せ」
やはり。
生徒を人質にするつもりはないようだ。
あくまで、目的は賢者の石のみ。
なら、話は楽だな。
「さっきの質問を、もう一度するよ。君は何者なんだ?何故、賢者の石を狙う?」
「…」
シルナが尋ねるも、男は答えない。
そして、返事の代わりとばかりに。
懐に持っていたであろう、欠片となった賢者の石が光った。
「…っ!」
男の四肢を捕らえていた、すぐりの糸が消えてなくなった。
賢者の石の、魔封じ能力だ。
そういうことか。賢者の石の能力を使いこなすこの男には、通常の魔法は通用しない。
しかし。
「…僕のは魔法じゃないから、消えないよ」
令月の小太刀は、魔法によって作ったものではない。
そもそも令月は、力魔法のみしか使えない。
そして令月ならば、力魔法がなくても、小太刀の腕だけで、この男と充分に渡り合えることだろう。
更に、すぐりのサポートもある。
糸が通じないと見るや、すぐりは自前のクナイを両手に構えた。
間違いなく、あのクナイには毒が塗ってある。
魔法を封じたとしても、この二人の連携を相手にするのは、さぞや辛かろう。
しかし、それでも男は、まるで動じなかった。
「…ならば、俺ももう一度同じことを言う。…賢者の石を返せ」
毅然として、そう繰り返した。