神殺しのクロノスタシスⅣ
賢者の石を…返せ…か。

お前のものなのかよ、と突っ込みたくなるが。

「君は『サンクチュアリ』の人間なの?」

シルナは、相変わらず質問を続けた。

すると。

「俺を、あの薄汚い盗人集団と一緒にするな」

男の逆鱗に触れたらしく、凄まじい形相でシルナを睨んだ。

成程。これは有益な情報だ。

この男は、『サンクチュアリ』の人間ではない。

「じゃあ、君は何の為に賢者の石を追ってる?賢者の石の力を利用する為じゃないの?」

「それは貴様らだろう。賢者の石を、あろうことか魔導師排斥運動の為に使うとは。断じて許されることではない」

…それって…。

「賢者の石を封印を解いたのは誰?君なの?君が、イーサ・デルムトから聞き出したの?」

シルナが、その名前を口にした途端。

「…!」

謎の男は、驚愕に目を見開いた。

…何?

やっぱり知ってるのか、封印を託された魔導師の名を。

「彼を脅したの?騙して聞き出したの?そうでもなきゃ、賢者の石の封印を解くことは出来ないはずだよね」

「…何故、お前がそんなことを知っている?」

「私は、イーニシュフェルトの里の賢者だ」

「…!」

驚愕、再び。

知らなかったのか。シルナがイーニシュフェルトの里の生き残りだと。

「では…神殺しの魔法を使った、伝説の聖賢者というのは…」

「…うん。それは私のことだね」

「そんな、まさか…。何故、こんなところに…」

まぁ、当然の疑問だな。

「私のことより、今は君のことだよ」

と、シルナは言った。

「君は封印の在処を知っているのかい?何故?イーサ・デルムトを利用して、賢者の石を手に入れたかったから?」

「…ふざけるな」

謎の男は、怒気を含んだ声で唸った。

…おいおい。ブチギレさせてるぞ。

「俺が…そんなことをするはずがない。あの方を騙すなど、利用するなど…!勝手な憶測で物を言うな」

「なら、さっさと真実を話しなよ」

令月。言葉に気をつけろ。

これ以上怒らせたら、また賢者の石が火を吹くぞ。

まぁ、正論だが。
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