神殺しのクロノスタシスⅣ
それよりも。

この男今、イーサ・デルムトのことを、「あの方」と言ったよな?

自分が利用したり騙したり、脅した人間を、そんな風には呼ばないだろう。

なら、つまり…。

「君は…イーサ・デルムトの何?彼にとって、君は何なんだ?」

「俺は…俺は、デルムト師匠の薫陶を受けた、彼の弟子だ」

今日、一番の衝撃の新事実だった。

イーサ・デルムトの弟子、だって…?

いたのか…そんな者が…。

「弟子…。イーサ・デルムトの弟子…」

これには、シルナも驚いていた。

予想していなかった展開だ。

「シルナ、聞いたことはあるのか?」

族長の友人、イーサ・デルムトに、弟子がいたなど。

「ない。初耳だよ…」

成程。

じゃあ、まだこいつが嘘をついている可能性も、残っているってことだな。

だが…。

もし本当にこの男が、イーサ・デルムトの弟子であるなら、こいつが賢者の石を集める理由も分かる。

封印の在処や解き方を知っていても、不思議ではない。

「適当言ってんじゃねぇだろうな…」

「…師を愚弄するな。そのような嘘をつく意味が、俺にあるものか」

と、怒っている様は、とても演技には見えない。

ならば、本当に…?

「君が本当に、イーサ・デルムトのお弟子さんなら…私は、君に相応の礼儀を尽くさなければならないね」

シルナは、努めて冷静に言った。

「私はイーニシュフェルトの里の生き残りだ。君のお師匠さんと、イーニシュフェルトの里との関係は知っているね?」

「無論だ。イーニシュフェルトの里の族長が、聖戦に参加するに当たって…賢者の石の封印を、我が師に託した」

こいつ…。事情を知ってやがる。

本当に…デルムトの弟子なのか。

「君の…お師匠さんは…イーサ・デルムトは今何処にいる?族長の旧友であった彼は、今何処に?」

シルナがそう聞くと、自称デルムトの弟子を名乗る男は、唇を噛み締め、険しい顔つきで答えた。

「あの方は…今は、もう亡い」

…何だと。

イーサ・デルムトは…もう死んでいる、のか?

イーニシュフェルトの里の族長から、直々に賢者の石の封印を託された人物が、どうして…。
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