神殺しのクロノスタシスⅣ
「君の…弟子?」

いたの?そんな奴、って感じだな。

「あぁ。俺の弟子だ」

やっぱりいたんだ。

話がややこしくなる訳だよ。

弟子だったのはお前じゃなかったのかよ。お前にも弟子がいたのか。

「君も、誰かに封印の後を継がせる気だったということかな?」

「そうだ。俺は封印を守る為…万一のことがあってはならない、と思っていた」

万一のこと?

「俺の師が良い例だ。彼は自身の生涯をかけて、封印を守るつもりでいたが…。しかし魔導師と言えども、我らは不死身ではないんだ」

俺の後ろで、不死身の魔導師がお前の心を読んでますけど。

まぁ…ナジュとかいうチート級の例外を除けば。

確かに、俺達は不死身ではない。

人間のように、老いて寿命で死ぬことはないけれど。

怪我をすれば血は出るし、それが治らなければいずれ死ぬ。

イーサ・デルムトもそうだ。彼だって、保有魔力量から考えれば、老いて死ぬということは有り得なかった。

しかし、聖戦で酷い怪我を負い、その後遺症が治らぬまま命を落とした。

何万年も生きる魔導師とはいえ、不老ではあっても、不死ではない。

不慮の事故があれば、案外あっさりと命を落とすものだ。

「だから、俺は師と同じく、弟子を取ることにした。俺に万一のことがあったとき、封印の守り人が途切れることのないように。師から託されたこの賢者の石を、次代に繋ぐ為に」

…なんて強い責任感だ。

だが、今回の場合…その強い責任感のせいで、足をすくわれた。

お前の弟子が封印を解いたってことは、つまり…。

「なーんだ。この人、弟子に裏切られたんだ」

「背中から撃たれるとは、まさにこのことだね」

おい、だから元暗殺者組。

言葉には気をつけろよ。容赦なさ過ぎだろ。

そこはせめて、もっとオブラートに包め。

「…その通りだ」

しかし、案外に珠蓮の懐は広かった。

と言うより、責任感が強いあまり、言い訳をすることが出来ないのかもしれない。

…難儀な性格…。
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