神殺しのクロノスタシスⅣ
…その覚悟は、見上げたものだ。

…だが。

「俺の弟子のせいで迷惑をかけたことは、本当に申し訳ない。あとのことは、俺が責任を取る」

ほらな、また自分一人で何とかしようとしている。

シルナ二世。

そうは行かないぞ。

「賢者の石のこと、ミルツのこと、『サンクチュアリ』のことも…あとは俺が全て…」

「それは駄目だよ、珠蓮君」

出たよ。

絶対、そう言うと思った。シルナなら。

「駄目…?何が…」

「一人で背負い込もうとしてるのが、駄目」

お前が言うか、って感じだけどな。俺にとっては。

「ここまで事情を聞いておきながら、あとは君一人に任せる、なんて…そんな薄情なことは出来ないよ」

その通り。

「私達も、君に協力するよ」

「…!そんな…」

驚き過ぎだろ。

「まさか。これ以上、お前達の手を煩わせることはしない。これは俺の問題だ。俺がケリをつけなければならない」

よくシルナが言ってる台詞だな。

何でもかんでも自分のせい病患者の、常套句なのかもしれない。

重症だ。

「駄目だよ。そもそも、賢者の石が魔封じの石だなんて流言を流して、『サンクチュアリ』を唆したのは私なんだ。全ては私の責任なんだよ」

重症者二人目。

つける薬はない、ってな。

すると。

「『サンクチュアリ』を追うのは、聖魔騎士団を含め、我々の任務ですからね。その役目を横から掠め取られたんじゃ困ります」

「そんな事情を聞かされたんじゃ、放ってなんておけないよ。僕達も協力します」

「まぁ、異次元世界に入った僕達は、既に巻き込まれてますからね。今更ですよね」

「異次元世界で、ろくでもないもの見せてくれたからね〜。その落とし前はつけさせてもらわないと。ねー、『八千代』」

「そっか、確かに。『八千歳』が行くなら、僕も一緒に行くよ」

イレースも、天音も、ナジュも。

すぐりと令月も、やる気満々である。

そして。

「乗りかかった船だ。今更引き上げたんじゃ、こっちも気が済まない。それにすぐりの言う通り、俺達も『サンクチュアリ』には借りがあるからな」

その借りを返さないことには、いつまでたっても寝覚めが悪いままだ。

更に、シルナも。

「そうだよ!回り回って『サンクチュアリ』のせいで、私は始業式にシャネオン方面から来た生徒に、お菓子を渡せなかったんだから!その落とし前は、ちゃんとつけてもらわないとね!」

「…??」

困惑する珠蓮。そりゃそうだ。

お前、あれまだ根に持ってたのかよ。

「そんな訳だから、協力させてもらうよ。珠蓮君」

「…」

珠蓮は、しばし不甲斐なさそうに、目を伏せたが。

やがて、決意を固めた。

「…済まない。恩に着る」

そう、それで良い。

何でもかんでも自分のせい病の患者は、もっと他人を頼るということすれば良い。

それが、一番の治療法だからな。
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